男は部屋で寝そべって雑誌を読んでいる。無防備に投げ出された足に触れたい衝動を抑えながら目を閉じた。明るく名前を呼ぶ声、どんな時でも笑顔を絶やさないその活力は一体何処から湧いてくるのだろうか、皆目見当も付かない。口に出しはしなかったが、その明るさに救われている。
「イッキはイッチーが好きなんだと思ってた」
その言葉に男は振り返らないまま、そうかなと答えた。別段興味も湧いていない、淡々とした声。トキヤは好きだよ、ていうか俺別に嫌いな人いないしね。
「友達として、だけど。当たり前か」
「じゃあ、俺のことは?」
「…だいじだよ」
その違いをどう受け取ればいいのかわからず、レンは内心複雑そうな笑顔を浮かべた。男はちらりと振り返って口元だけで笑ってみせる。目が笑っていない。それほどまでに真剣なのか、はたまたからかっているだけなのか、レンには分かりかねる。
「レンが言うなら、ずっと一緒にいてあげてもいいよ」
いてあげても、いいよ。近づいてきた掌から逃げる術も知らぬまま。



//有海
∴いつのまにか刷り込まれた愛の定義に溺れる
(title:へそ)
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