淋しそうに笑う瞳をいつも一番近くで見てきた。何もかも諦めた表情で笑うのが得意な従兄弟は、何時からか本当に幸せそうに、楽しそうにわらうようになった。その原因を理解できないほど梓は頭が悪くない。どうやったら彼が幸せになるのだろうと、頭の片隅で常に考えていたからだ。自分ではどうやっても成し遂げられなかったことを成し遂げてくれた人間がいる。その事実だけで梓は満足だった。
「不知火会長?」
そして自分は今その大きな要因の一人と向かい合っている。彼は不思議そうにこちらを見た後、翼の従兄弟の。と何か納得したように頷いた。大方翼は何か仕出かして逃走中、彼は逃走中の翼を追い掛けているんだろう。最早学園の日常となったこの風景ももうすぐで非日常になるのかと思ったら、少しだけ悲しくなった。
「翼ならさっき屋上庭園に逃げるのを見掛けましたよ」
「そうか!悪いな」
聞いた途端走り出そうとした背中を思わず呼び止める。従兄弟より身長的には小さい筈なのに、何故だかその背はとても大きい。
「ありがとうございました!」
彼は訝し気に片目を眇た。が、気にせずに梓は笑って見せる。




◎アリスブルー・イン・ブルー






011-感謝なんてしませんよ/木ノ瀬梓
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