弓道場から覗く空は雲一つなく、思ったよりも青い。思わず溜息に似た息を吐き出すと、たまたま後ろを通り掛かった小熊が不思議そうに首を傾げた。
何時も引っ張られてきた彼女の力強さは龍之介にとって眩しい真夏の太陽のようだった。すぐ傍にあって目に痛いほど光を放つ絶対の存在。そんなことを言ったら名前とは真逆だね、と笑われてしまうから(恥ずかしいというのが本当は理由のほぼ八割を占めている)口にしたことはなかったけれど、自分は確かにそう思っていたのだ。――そうして何時かその隣に並ぶのが自分であったらいいとさえ、思っていたのに。
「宮地先輩?」
遠くから彼女とこの学園の支配者たる男の楽しそうに笑い合う声が聞こえてくる。
実際問題、彼女の隣に並ぶのが自分であればとは思っていたが、彼女が笑顔でいるなら自分なんて隣にいなくてもよかったのだ。自分が任せられると思った人物の隣で笑っていてさえくれば。そうして現に彼女は幸せそうに笑っている。ならば何を憂うことがあろうか。
「小熊、部活を始めるぞ」
青空が眩しい。龍之介はどこか楽しそうに目を細めた。






◎きみのしらないものがたり








009-あの子を任せられません/宮地龍之介
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