初めて彼に出逢った時、なんて上手に笑うのだろうと思った。子供には不釣り合いなほど大人びた表情。何かを諦めたような言葉遣い。子供らしさが欠如した彼は、それでも何時だって周囲から憧れられ、羨まれる対象である。琥太郎にはどうしてそうなるのかが理解出来ない。子供は子供らしい笑顔で笑えばいいのだ。何もかも押し込めた表情をするものではない。
「ありがとうございました」
手当を終えてそっと顔を上げると、彼がすまなさそうに眉を下げていた。大方手を煩わせて申し訳ないと思っているのだろう。そんなこと思う必要なんてどこにもないのだ。これが自分の仕事なのだから。
「…不知火」
口にした言葉はみっともなく掠れていた。彼がやって来るまで昼寝をしていたから当然なのだろうか、また保健係に怒られるなと頭の片隅で思う。
「お前はそうやって、頑張りすぎるから」
「俺が?俺なんかよりアイツの方が頑張ってますよ」
「…お前の頑張るはアイツとは決定的に違うだろう」
「…………」
「この学園はお前だけのものじゃない。仮にも俺は理事長だしな…そう肩肘を張って頑張らなくてもいい。俺にも、分けなさい。俺にも、守らせてくれたっていいだろう」
遠くから微かな飛行機のエンジン音が聞こえてくる。彼は暫く逡巡した後、漸く小さく笑った。年相応の無邪気な顔で。







◎よるがあけるよ





009-守りたくないってこと/星月琥太郎
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