「また翼くんが何かしたんですか?」
生徒会室に足を踏み入れると焦げ臭さが鼻をつく。そうみたいだね、と彼女は苦笑しながら換気のために窓に駆け寄っている。当の本人は叱られることを懸念したのか不在のようで、彼女が窓を開けるカラカラという音以外には何も存在しない。(まったく翼くんは)そう思っても口にしないのは、この臭いの原因を知っているからだった。もうすぐ卒業する彼のためにプレゼントを作る。そう彼が言って早一週間。満足のいくものは出来たのだろうか。
「もうすぐ、卒業式ですね」
「……颯斗くんは、淋しい?」
「それは、」
淋しいのか、悲しいのか、颯斗には分からない。彼が抜けることで生徒会という場は一旦崩れてしまう。けれどもずっと生徒会は颯斗の居場所だったそこがなくなるわけではない。彼が作ってくれた、彼の楽園、優しさの居場所を守り発展していくことこそが自分の役目なのだと、そう思うのだ。
「淋しい、のは、そうかもしれないです。でも、僕の居場所はここですから。だから、大丈夫です。会長が作り上げてきたものを僕が守り育てる。これ以上達成感のあることなんてきっとないですよ」
「……うん、そうだね」






◎やさしいばしょでまちあわせ。





008-居場所じゃない/青空颯斗
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