「全く、よく頑張るよねえ」
雨が降っている中、入学式に合わせて作られたのだというモニュメントを必死に取り込もうと躍起になっている若草色の瞳を見付けてそう小さく呟く。ざあざあと降りしきる雫は冷たいだろうに、彼は何だか楽しそうに見えた。どうして楽しめるんだろうか、きっと自分には一生理解できない。
「うちの生徒会長は頑張り屋だからな」
同じように窓の外を眺めていた琥太郎が珈琲を啜りながら誰に言うわけでもなくそう零す。郁には絶対真似できないよな、そうからかうように言われたのでうるさいよ、と答えるだけに留めたが、実際やれと言われたってやりたくない。寒いのは嫌だ。
「なんかさ、ああいうの見てるとつい応援したくなるよ。応援なんて柄じゃないんだけど」
「郁が応援だと?明日は雪か…」
「ちょっと琥太にぃ黙ってくれない?」
もう一度窓の外に目を遣ると、どうやらちゃんとモニュメントを撤収することに成功したらしい、彼が仲間たちと楽しそうに笑いあっているのが見えた。勿論隣にはあの子がいて、しあわせそうに笑っている。ああ彼にとってもあの子にとっても、楽園というものはきっとあそこにあるのだろう。
思わず笑みが零れてしまった自分の横で、琥太郎が訝し気に珈琲をすする。





◎離れたところで応援してるよ





005-応援なんてしないよ/水嶋郁
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