「何で薫はまた私の邪魔をしたの…!?」
そう言った妹――千鶴に俺は満面の笑みを浮かべて返事を返した。体育館の裏に呼び出さすから、何かと思えばそのことか。
「何でって、決まってるだろ? 楽しいからだよ、俺が」
「悪趣味っ!!」
「そうぷりぷり怒るなよ」
「怒ってるのは薫の所為でしょ!」
恨めしげに俺を睨む千鶴に、それが兄に対する態度かとほっぺたをつねってやった。
「いひゃいっ! かほふのばひゃ!!」
「あー、はいはい…って千鶴、顔が面白いことになってるよ」
「! 〜〜〜っ!!!!!」
千鶴の恋路を邪魔することが楽しくてたまらない。今日だって妹の好きな奴の前で、妹の株を急落下させてやった。これであいつはもう俺の可愛い妹に近付かないだろう。
まぁ、その度に『何してくれんのよ!』と怒る妹が可愛くてついやってしまうのだ。
最低な兄だと言うことくらいは自覚している。だが、これだけはやめられない。
(でもね、ホントはね、千鶴。なんで毎回邪魔をするのかは…)
心の何処かで、妹が自分から離れてしまうことが怖いからだ。また離れ離れになってしまうんじゃないかって。だから、阻止してしまうのだよ。
「分かってくれ、妹よ」
「意味分かんないっ、薫のバカ! 嫌い嫌い!」
「嫌いで結構。心の広いお前のお兄ちゃんは妹の暴言を甘受してやる」
「いやいや!? 違うよ、心狭いよ!薫は」
「またつねるよ? 今度はその可愛い顔が変形するまで」
「! 薫なんて大っ嫌い!」
「俺は千鶴が大っ好きだけどな!」
「!!?」
パクパク口を開いて何かを言おうとする千鶴に、先手を打とうと俺は動く。
「俺は妹を世界で一番愛してるっ!」
屈託のない笑顔を妹に見せて。
「千鶴が大っ好きだぁあ!!」
「か、薫! 声が大きいっ」
俺の行動全ては、妹と自分自身の為。それ以外は絶対に働かないし、動かない。この先もずっと妹の恋路を邪魔するだろう。
認めよう、俺は極度のシスコンだ。
「愛してる千づ――むぐっ!?」
「もう分かったから! 誰かに聞かれたら恥ずかしいからやめて!!」
さっきまで怒りで真っ赤になっていた顔が、今度は羞恥心で真っ赤に染まる。
「〜〜っ、私も、薫が大好きだけど」
俺の口を塞いだ手を退けて、俺の手首をギュッと掴んだ。
「邪魔するお兄ちゃんは大っ嫌いなんだから! もういい!早く教室行こう!」
俺を引っ張ってズンズン教室に向かう。
俺はにやけ顔を隠せず、ほくそ笑んだ。
「千鶴、大好きだよ」
「私は薫なんか大っ嫌い」
「別に良いよ、大っ嫌いでも」







 、




(ほら、嫌いは好きの裏返しって言うだろ?)
(次は絶っ対、邪魔されないよう恋してやるもん!)



花葬さまにて提出。2011.2.27
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