僕が愛しているのはこの世でたった一人だというのに、どうして僕は見たこともない女と結婚せねばならないのだろう。
「そんな顔をなさってはなりませんよ、王子様」
「だって、」
傍で紅茶の準備をしている僕専属の召使い、千鶴が窘めるように言う。千鶴が困ったように笑った。
「素敵な御方じゃないですか。隣国のお姫様なのでしょう?」
「あのね、千鶴。僕にはそんなことどうだっていいんた」
ぽつりと呟く。そうだ。僕にはどうだっていいのだ。
この体の隣に並ぶの彼女がいい。どんなに綺麗に着飾った女よりも、立派な隣国の姫なんかよりも、僕の隣でこうやって世話を妬いてくれる、この温かい存在が。
「僕は千鶴がいいのに……」
「またまたそのようなことを仰有って」
千鶴は困ったように笑った。
「私は王子様……総司さんがそう仰有って下さるだけで十分です。十分、幸せですから」



嗚呼僕が欲しいのはこんな言葉じゃないのに。


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