平助くん、起きて!!雪だよ!!」
鈴の音のような耳に心地良い音が響く。閉じていた瞼をゆっくりと押し上げると、キラキラと輝く笑みを浮かべた千鶴が見えた。
「……雪?」
「そう。今年はまだ降ってなかったもんね」
庭に広がる穢れ無き白のそれは、隣で笑う彼女にとてもよく似ていた。汚れを知らずいつまでも純粋であり続ける彼女。自分には勿体無いくらいのその白に一体どれほど救われたのだろう。
「……白いな」
「そりゃあ雪だもん。白いに決まってるよ」
くすくす。小さな笑い声。その優しい音につられて笑ってしまう。
ガラリと扉が開く音がして、気付けば千鶴が白の中で両手を広げて此方を見て笑っていた。伸ばした腕の先、掌の中に光が見えた。
「平助くんっ!!」
千鶴が笑う。あまりにも純粋な顔で。
そんな愛しい人の表情を見ながら一人ぼんやりといつか訪れる別れを思った。


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