殺すだなんて嘘だよ。斬るだなんて嘘だよ。
でもそんな嘘でも吐いていなきゃ、僕は壊れてしまう。君を愛しいと想う気持ちと、近藤さんの刀で在りたいと思う気持ちがせめぎあって、どちらが本来僕が持っていた気持ちであったか忘れてしまいそうになる。
「沖田さん」
ほらまた君がそんな優しい声音で僕を呼ぶから。
苦しいよ辛いよ痛いよ悲しいよ誰か助けてよ。
僕は近藤さんの刀として生きていかなくちゃならない。近藤さんと新選組以外何もいらないんだ。だから、だからさ。お願いだからこれ以上僕の中に入ってこないでよ。
いらないんだよ。君なんか。いらないんだよ。君を想うこの気持ちなんか。この手はもう大切なものでいっぱいなんだ。君の入る隙間なんてないんだよ。
それなのに。
それなのに、どうしてかな。
この手にあるものを放り出しても君を受け止めたいと、抱き締めたいと思う自分がいるんだ。

横たえた体から腕だけ天井に向かって伸ばす。
苦しいな、君に逢いたい、なぁ。
矛盾してるだなんて自分が一番よく分かってる。それでも、それでも。

本当は。許されるなら。
君に触れたいんだよ。君に近付いて、一緒にいたいんだよ。君をぎゅっと抱き締めて笑いあいたいんだよ。


叶わない願いだと知っていても。





僕はきっと君に伝えられないから。この想いを隠したまま死んでいくだろうから。君はこんな弱くて脆い僕を知らなくていい。どうかお願いだから気づかないでいて。

でも。それでも一つだけ我が儘を言わせてもらえるなら。

君はずっと変わらずそこにいて。
偶に振り返って君を確認したくなるからさ。そうしたら僕をみて笑ってよ。




090125/有海
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