〜もしも土方が教師だったら〜(現パロ.土千)


授業の終了のチャイムが鳴る。教卓の前に立つ古典教師―土方歳三先生は、その手に持った教科書をパタンと閉じてクラスを一度ぐるりと見回した。そんな彼と目が合った気がして思わず教科書で顔を隠してしまう。
「……、じゃあ今日はここまで。明日小テストするからな、覚悟しとけ」
その一言にクラスが一斉に騒ぎ出す。しかし千鶴にはその言葉よりも、その前のちょっと微妙な間の方が気になった。
もしかしたら彼を怒らせてしまったかもしれない。でもしょうがないのだ。だって、
「(だって恥ずかしいんだもん…!!)」
未だに騒がしいクラスの中で一人熱心に教科書を読んでいる(傍から見るとそう見える)千鶴を不信に思った男友達の一人が声を掛けてきた。慌てて千鶴が男友達の方を向いた、その時。
「雪村、お前後で俺んとこ来い。小テストであんな点数取ったのお前だけだぞ」
「……土方先生!?」
クラスから出て行った土方の顔は楽しそうに歪んでいて、嗚呼自分はどうやら彼を不機嫌にさせてしまったらしい。
「土方先生の補修、スパルタだって有名だぜ…」
「う、うん…」暗に死ぬなよと告げてくる男友達に力無く千鶴は笑みを返した。





ガラリと扉を開くと椅子に座って本を読んでいたらしい土方が此方を見てきた。それすら恥ずかしくて思わず目を逸らしたくなるが、そこはぐっと堪える。二の舞になっては堪らない。
「鍵締めとけよ」
「分かってますっ」
「なぁに怒ってんだ…千鶴」
二人きりの時だけ呼ばれるその名前。伏せていた目を少しだけ土方に向けると、優しいその顔が見えた。
「お、怒ってるのは土方先生じゃないですか!!確かにこの前の小テストは悪かったですけど、あんな人前で言わなくたっていいじゃないですか!!私恥ずかしかった…」
「どうして俺が怒ってたんだと思う」
「え、どうしてって…」
今度こそちゃんと顔を上げると土方は真剣な表情をして千鶴を見つめていた。途端に早くなる心音と赤く染まる頬に気付きながら一生懸命考えてみるも全く分からない。そのまま黙っていると、ハァと土方が小さく一つ溜め息を吐いた。
「ったく…」
ふわりと体に回る腕。思考が停止する。
このままじゃ死んでしまう…!!
この状態で既に一杯一杯なのに、土方は更に耳元近くで囁いてくるから質が悪い。
「俺だってな嫉妬するんだよ、いい加減気付け」
ガバッと顔を上げて土方を見る。顔が緩んでしまうのは仕方ない。
「……何だよ」
「私が一番に好きなのは土方先生ですから!!」
言った後で死にたくなるくらいの羞恥が襲ってきた。でも土方がそれはそれは優しく嬉しそうに笑うから、
「……あぁ、俺もだ」
だから恥ずかしいままでもいい、かなあ。

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