最近千鶴ちゃんの様子がおかしい。どこかそわそわしていて何時もより落ち着きがない。普段やらないような失敗もするし夕餉の量も少ない。

「(おかしい…)」

夕餉の席、向かい合って座る千鶴をじっと見つめる。当の千鶴はきょとんとして僕を見返してきた。

「どうかしましたか?総司さん」

「あのさぁ、千鶴」

僕に隠し事だなんて許せない。場合によってはお仕置きかな。そう思いながら千鶴に問い掛ける。

「僕に隠し事、してるでしょ」

「なっ何で断定的なんですか!!」

元から嘘が吐かない性格の千鶴は目に見えて狼狽してみせる。それでも隠し通せると思っているのか、必死に隠そうとしていた。

…気に入らない。

「だって何時もやらないような失敗をするし、ちょっと具合が悪そうだし、夕餉の量も少ないし…まあ落ち着きがないのは何時もことだけど」

「さらりとひどいこと言いますね…」

僕の言葉に何故だか赤くなった千鶴は半眼で僕を見る。でもそんな顔をされたって怖くない。寧ろとても可愛い。それが僕の熱を煽ることを千鶴は知らないんだろうか。

「ほら、証拠は揃ってるんだから。さっさとはいちゃいなよ」

「悪人みたいな言い方は止めて下さい!!」

「僕に隠し事をしている時点で駄目でしょう。ほら言わないとどうなるか…ああ、分かっててやってるんだ?」

わざと最後だけ低めに言ってみる。最近知ったことだが、千鶴は僕のちょっと低めの声に弱いらしい。案の定先程よりも赤く赤く染まった頬。

「言います言います!!」

「良い子だね。まあ僕としてはお仕置きでもよかったんだけど」

勿論隠し事は聞き出すが。

「…で?ほら言ってごらん」

「あ、う…」

余程言いにくいことなのか千鶴は口を鯉のように何度もぱくぱくと動かす。それでも僕が辛抱強く待っていると漸く蚊の鳴くような声で呟いた。

「…が…です」

「え?何?」

「…ちゃんが…きたんです」

「ごめん千鶴。よく聞こえな、」

「だっだから、その、赤ちゃんが出来たんですっ!!」

時が、止まった。

「……は?」

「最近月のものも来なくて、体調も優れなかったので念の為にお医者様に診てもらったんです。そうしたら…って総司さん?口が開いてますけど、どうかしましたか?」

「あ、いや、」

きょとんとして千鶴はこちらを見る。そんな千鶴がわざと顔を逸らす。今、間違い無く僕の顔は赤いんだろう。それを見られたくなくて右手で口元を覆い隠す。

「総司さん?」

「…こっち見ないで」

僕の状態に気付いた千鶴が控えめな笑い声を上げて僕に近付く。そうして左手を優しく握ってきた。温かい。

「私を幸せにしてくださって有難う御座います、総司さん」

視線を千鶴に向ける。その笑みがあまりにも綺麗なものだったから、僕も思わず笑ってしまった。

「それはこっちの台詞」

抱き締めた体は柔らかく、この幸せを何時までも守っていこうと固く、固く誓った。

「僕を幸せにしてくれて有難う、千鶴……愛してるよ」



















090503/有海

10000hit企画より夕陽様リクエスト。夕陽様のみお持ち帰り、返品可能です。

幸せ、甘い妊娠ネタとありましたので有海なりに頑張ったのですが如何でしょうか…!!

それでは遅くなってすみません。企画への参加本当に有難う御座いました!!
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