繰り返される機械音。日に日に朽ちていく手足と奪われていく声。薄れてかき消されていく記憶。
私は私で在りたいのに私が私じゃなくなっていく。
「起きてください」
ガタッと音がして部屋の扉が開く。慌てて扉に目を遣るとあの男が立っていた。手には黒光りする何か。
「わ、私は嫌だって言って…!!」
毎朝毎朝男はこうやって部屋を訪ねて来ては私に×××を強要する。
「我が儘を言わないで下さい」
我が儘とは一体どういうことなのだろう。×××を拒むことの一体何がいけないことなのか。
私が傷付く分には構わない。それ位我慢してみせるよ。でも、私じゃない、罪のない誰かが傷付くのは嫌なのだ……それも自分の手で。
……貴方もこれを我が儘だと言いますか。ねぇ、土方さん。
「はぁ…。完璧な人形だと思っていましたが、どうやら出来損ないだったようですねぇ」
ポツリと男が呟いた言葉に慌てて顔を上げる。彼が持っていた黒光りする何かーーー銃口は間違い無く私に向いていた。
「何を……!?」
「痛みを感じないそうですからあまり意味はないですが…まぁ良いでしょう」


バキン、と嫌な音がした。


「…………え?」
バキバキと嫌な音が途切れない。左腕が砕け散りながら床に転がっていく。
「言うことを聞くまでお仕置きですね…。なぁに、また治せば良いんです」
ガンっと腹部に穴が開く。ドロリと零れ出した液体は透き通っていた。
「や、ぁ、」
続けて二発、左足と右足に。痛みは感じない。感じない筈なのに……!!


『お前は俺の特別だ…体に傷なんて付けんなよ』
『つ、付けません!!どういう意味ですか!!』
『そのままだ。って、俺が付けないように一番に気を付けねぇとな?』
『!!土方さんの馬鹿………!!』



彼との約束が音を立てて崩れていく。
「い、いやぁあぁぁあぁ!!」
バキッと音がして喉に穴が開く。静かに意識を手離す前によぎったのは土方さんの優しい笑顔だった。





090421/有海
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -