僕にはもうあの子しかいない。
地面はぐらぐら揺れて、空は今にも落ちてきそうで、この身は今すぐにでも奈落の底へ堕ちていきそうで、でもそれでも僕が立っていられるのは他の誰でもないあの子がいるからだ。誰よりも何よりも優しくて大切で愛おしい僕の唯一の女の子。こんな死に行くだけの僕に付いてきてくれた宝物みたいな女の子。
まだ『ごめんね』も『有難う』も『愛してる』も言えていない。僕に残された時間はあと少しで、それはあの子の傍に居られる時間と同じだ。だからこそ、伝えておきたい。僕の気持ち、想いを全て。限られた時間の中、溢れ出すこの想いをどれだけあの子に伝えられるだろう。そんなこと分からないけれど、何も伝えないまま、さよならだけは言えないよ。

瞼の裏に思い描くのは、君と生きていく明日。僕の隣には君が居て、柔らかく微笑んでくれる。それだけて僕はきっともう何も要らない。
好きだよ大好きだよ愛しているよ。世界を僕の命を失っても君だけは失いたくないよ。

願わくば、僕の命が尽きるまで手を繋いでいて欲しい。優しくて温かくて、僕の穢れた手とは違う、君のその手で。そうして僕の命が尽きるとき、君が笑っていてくれたらいい。僕の一等好きなその笑顔で。


なんて、我が儘過ぎるだろうか。でもこれだけは伝えたい。


君が僕の幸せです。



僕は気付かなかった。後ろを歩くあの子が何を考えているか。
別れは近付いていたのに。その足音にさえ気が付かないまま。



090204/有海
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