空は泣きたくなるほど澄んでいて桜は寂しいほど柔らかい。まるで君の笑顔のようで、この世界全てが何よりも美しいものみたいに見えてくる。君の傍にいればどんな醜いものだって美しく見える気がするよ。
殺すって言ってばかりだったし、邪魔になればそうするつもりだったのに。どうしてかな、何時の間にか君が本当に愛おしくて。
ただ人を斬ることしか知らなかった僕に幸福の意味を教えてくれたのは紛れもない君だった。

僕は急ぐ。これ以上君を待たせない為に。

今度君が最期を迎えるときは傍にいさせて。否、一緒に行かせて。君はいつも一人で何も言わずに何処か遠くに行ってしまうから。独りは寂しいよ。
桜舞う下、君はどんな気持ちであの言葉を口にしたのだろう。どんな気持ちで僕に微笑んだのだろう。僕には分からないけれど。

記憶と寸分違わない桜の木の下、愛おしい君が見えた。

この桜に誓う。この先永遠に僕は君を、

一陣の強い風が吹く。その風に負けないように、何よりも愛おしい君の名を呼んだ。


『「千鶴ちゃん」』

桜が舞い散る空の下。君と永遠の約束を一つ。
「遅くなってごめん…やっと約束を果たせるよ」
僕が一等好きな笑顔で君は笑う。
「迎えにきた……ほら、おいで」
君が寄ってくるのが待ちきれなくて、その細い腕を引っ張る。抱き締めた体は温かかった。
嗚呼、また泣かせちゃったな。君はあの頃から泣いてばかりだね。
変わらないね、泣き虫なところも。
小さく呟くと君は拗ねたように言う。
「誰のせいだと思ってるんですか…!!」
……僕のせいだね、ごめんね。
言葉に出来ない代わりに、腕に力を込める。少し苦しそうに身じろぎしたけどそれでも笑ってくれた。
「…うん、ごめんね。でも、これからはずっと一緒だよ」
そっと流れる涙を拭ってやり、そのままゆっくり唇をなぞる。
君は小さく笑って目を閉じた。察しの良い子は好きだよ。
幸せに酔いそうになりながら僕も目を瞑った。





ーーーやっと逢えたね。



090201/有海
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