僕がこの世に生を受けた一度目、彼女は僕の曾祖母だった。
祖母の家に在った古ぼけたアルバムの中に彼女は存在した。あの頃のように優しい笑みを浮かべて。
祖母の話ではとても優しく気立ての良い人だったのだという。僕を忘れてしまっていたという事実は悲しいけれど、幸せになってくれたならそれだけで十分だった。

二度目生まれ変わった時、僕は彼女に逢うことが出来なかった。彼女がこの世に生を受けていなかったのか、それとも僕の罪がまだ許されないのか。己の生が終わるその時まで何かを探し続けた僕を人は嘲笑うけれど、そんなの言わせておけばよかった。強がりだと気付かれていたかもしれないけれど。

三度目。僕は彼女に出逢った。

あの頃と変わらない優しい笑みを浮かべて彼女は言う。初めまして、と。
僕が望んでいた言葉とはかけ離れていた。でも構わない。また出逢えた。彼女が僕を、あの約束を覚えていなくとも僕と同じ空間に存在している。ただその事実がどうしようもなく幸せで。

今度は幸せにしたい。嫌になるくらい甘やかして、あの頃彼女にしてあげられなかったこと全てをしてあげたい。彼女が笑えば僕も笑って、どんなことも二人で叶えていく。
君が僕の名前を呼んで笑う。たったそれだけで世界は色付き苦痛が幸せに変わる。君さえ居れば何もいらない。他に何も必要ない。

「ちづ、る」

思い出さなくていい。覚えていなくていい。
だからお願い。
もう一度だけでいいから僕のことを好きになってよ。



090130/有海
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