「ねえ千鶴ちゃん。千鶴ちゃんはもし、世界中の人達が自分の大切な人の敵になったらどうする?」
彼女の静かな問い掛けに私は首を傾げる。意図が掴めない。
「これね今ちょっとした流行りっていうのかな。ドラマの中の主人公が言ってたやつなんだけど、千鶴ちゃんならどう答えるのかなって思って」
そんな言葉に私は小さく目を瞑って考える。
もし、世界中の人達が沖田さんの敵になってしまったら。
周り全てが敵であったなら、私は彼を想うことすら許されないのだろうか。

「……もし、世界中の人達が大切な人の敵になったら」
私が誰よりも何よりも彼を想う存在になろう。それが例え茨の道であっても。
「私が大切な人の一番の敵になります……この世で一番、大切な人を想う存在であるために」
「……」
「私が一番の敵だったら、」
どんなに彼を想っていても許される、一番自然な形。それが背徳と呼ばれようと構わない。禁忌を犯す私を嘲笑っていい。だからどうか彼を想うことを咎めないで。
「どんなに大切な人のことを想っていても、きっと許されるでしょうから」


彼は何と答えるのだろう。
瞼の裏に描いたのは、彼の凛とした後ろ姿だった。



090128/有海
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -