※シンデレラテツナちゃんと王子様黄瀬くんと幼馴染み青峰くん


1.これが自分か、鏡に映った姿を見て愕然とする。王子様とダンスをした際の昂揚感は跡形もなく消え去っていた。鏡に映った着飾った美しい少女は一体誰だ。こんな人間知らない。少なくとも今まで見たことがない。他に誰かいるわけでもないから紛れもなく自分である筈なのに信じられなかった。だってこんなの自分じゃないんだもの。さらさらの髪もつやつやの唇もすべすべの肌も荒れていない指先も。全部違う。こんなの、わたしじゃない!「あ、黒子っちいた!」ばっと振り返るときらきらと笑う男が一人。探したっスよ、戻ろ?差し出された手、荒れていない綺麗な手。自分の手を見る。綺麗な手。気持ち悪い。遠くで十二時の鐘が鳴る。「……ごめんなさい」

2.少女は走った。後ろから自分を呼ぶ声が聞こえても、それがどれだけ愛しくても振り返らなかった。途中躓いて脱げてしまったガラスの靴は地面にたたき付けて壊す。探しに来ないで、あなたが好きだと言ったわたしは、本当のわたしじゃないの。

3.見慣れた畑道の入口に見慣れた姿があった。浅黒い肌、高身長。何時からそこにいたんですかなんて聞ける筈もなく。「……おかえり、テツ」優しい声。ぼろぼろと涙が零れる。ひっでぇ顔。頬を包む冷たい手。ねぇ、何時から待ってくれていたの?「俺は世界で一番お前が可愛いよ」ボサボサの髪、かさかさの唇、ざらざらの肌、荒れた指先。こんなボクでも?こんなお前が。
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