※年齢操作してます。黄瀬くん、黒子くん=25歳
黄瀬くんは最近帰りが遅い。大学に入学すると同時に本腰を入れ始めた芸能活動が軌道に乗っているから、というのが主な理由である。もともと見目も好く人から好かれやすい性格をしている彼がこうなるのは時間の問題だったのだ。今や雑誌の表紙からテレビコマーシャル、噂ではドラマのほうにも出演依頼が舞い込んでいて、事務所は嬉しい悲鳴を上げているらしい。らしい、というのはテレビニュースや雑誌から得た情報であるからである。ボクはあまりこういう話が得意ではない。
一週間海外でのロケを終えた黄瀬くんがふらふらとした足取りでこの部屋に帰ってきたのはついさっきのことだ。余程疲れていたのだろう、挨拶もそこそこにベッドに倒れこんで寝てしまった。それでもボクの額に唇を落とすのを忘れなかったのは最早流石としか言いようがない。ひとを喜ばせることに関して年々スキルアップしている彼に、ボクはいったい何が出来るだろうかと思いながら、帰ってきたら渡そうと思っていた合鍵をそうっと机の引き出しにしまう。いくら彼がこの部屋に帰ってくることが多くなったとはいえ、ここは彼の家ではない。
――合鍵を渡すのはボクなりのけじめだった。数日かけて悩んだ結果にしては安易かもしれない。けれど、ボクにとってはこれが精一杯だった。合鍵に黄色のストラップを付けられたのだって奇跡としか言いようがない。
黄瀬くんはいつもオレの方が絶対黒子っちのこと好きだよと言うけれど、そんなのボクだって同じである。寧ろ不足していると思われる方が心外だ。口にすることのできる想いだけが全てではない。口にできない想いだって質量は同じだ。すき、という感情は触れてしまえば弾けてしまうほどに脆いのだから、大切にして何が悪いのだ。
眠った黄瀬くんに気づかれないように枕元に近づいて、先ほど彼がしてくれたように、その額に唇を落とす。どんな夢を見ているのかな、夢の中でもきみがしあわせであればいいのに。言えない言葉が伝わるように祈りを込めて。
「おやすみなさい、黄瀬くん。明日も笑顔のきみに会えますように」
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -