コンビニでバイトする高校生黄瀬くんとテツナちゃん


1.俺のバイト先には「テッちゃん」と呼ばれるひとがいた。シフトが一回も被ったことがなかったから俺はそのひとが男なのか女なのかも知らない。先輩である高尾クン(でも同い年)によると優しくて礼儀正しいひとらしい。テッちゃんという呼び名からするに名前には少なくとも「テツ」が入っている筈で、ならば男なのだろう。昔高尾クンが「真ちゃん」と呼ぶからてっきり高尾クンの彼女かと思っていたら身長190越えの男だったという事実がさらにそう思わせる。
名前にテツがはいっていて優しくて礼儀正しい。身長はそんなに高くなくて黒髪。俺の中のテッちゃんはそんなひとだった。


2.「黄瀬くんはボクが男だと思っていたんですよ」いまだにネタにされるその話を俺は真っ赤になりながら遮る。結論からいえばテッちゃんは男ではなかったし黒髪ですらなかった。淡い空色を纏う彼女は俺より一回りも二回りも小さくてすごく可愛い。すごく可愛いというのは最近気付いた感情だった。「……黒子っちはバイト掛け持ちしてるんスよね?」話題を変えたくて適当に話し掛ける。「そうですよ」「大変じゃないっスか?俺ここだけでもへとへと〜」「だらし無いですね、しゃきっとしてください男子高校生。それに夢のためですから」「夢?」「はい。アメリカに行きたいんです」


3.俺が高二の夏に黒子っちはバイトを辞めた。なんでもアメリカに行くだけのお金が貯まったのだという。いつ帰ってくるんスか?さあいつでしょうか。長い旅行にでも行くのかと思っていた俺は最後まで彼女がどうしてアメリカに行きたいのか、どうして答えを濁したのか今も知らない。テレビは最近ずっとNBA選手である青峰が結婚するという話題で持ち切りだった。
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