進路のことで親と喧嘩して、
気づいたら携帯ひとつ握りしめて家を飛び出していた

家から少し離れた公園で、ひたすらブランコをこぐ

夕飯をつくる台所のいいにおいが鼻を掠める



空があかい





「いた」



振り返るとそこには思いきり不機嫌そうな顔


「マキー、」




ブランコの速度が落ちる



「おばさんから電話きた」
「ふーん」
「帰るぞ」
「いや」




淡々と繋がる会話

ブランコがとまった
それと同時にからだを引きはがされた


じん、とからだの芯が痺れる



「マッキーの手、あったかいね」
「はいはい、それはよかったですね」



うん、よかった

発した言葉は掠れて音にしかならなかった



「うわ・・・泣いてんの?」
「・・・泣いてない」
「・・・ばーか」




握られた手に、少し力が入った

こうやって手を繋ぐのはいつぶりだろう



「うち飛び出す前にさ、こう、なんかあっただろ」
「・・・なんか?」
「単細胞じゃあるまいし」
「だから、なんかってなによ」




つい口調が鋭くなる
単細胞にはちょっと傷つく

ねえ、はっきり言いなさいよ

繋いだ手を急かすようにゆらゆら揺らす



「だからーその、相談するとかー」
「相談?誰に」





俺、とか


蚊の泣くような声に、思わず聞き返しそうになった

だって、あのマキが


無意識のうちに頬が緩む



「マキー」
「・・・あ?」
「キスして」
「ぶっ、はぁ!?」




顔真っ赤

指さして笑うと、
マキは口元に手をあてて、例のあの釣りぎみの大きな瞳でこちらを睨んだ


そうかと思ったらいきなり歩みを止めて


気づいたら、マキの顔は目と鼻の先

薄い香水の香り



その瞳にうつるあたしは、なんて愛おしそうな顔をしているのだろう





「ちゃんと家帰るまでお預け」





くらり、心臓はゆれる


(「なに自分で言って照れてるの」「うっせえ」)

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