「宮村は?」
「え、知らないけど」
「ここで待ってたら来るか」


扉が閉まって、しんと静まり返る生徒会室。目先の彼女は眠そうにあくびを一つ。中学生の時は度々付き合っているのかと誤認されていたらしいけど大して気にはしていなかった。きっと彼女も同じく気にも止めていなかったと思う。俺と彼女はそういう関係だからだ。宮村くんも幼なじみと聞いても特に何も思わなかったと思う。俺と彼女はそういう関係だからだ。


「仙石はさ、宮村のことどう思う?」
「…どう思うとは」
「変、だと思わない?」


即答した。思うよ、と。「変だよね。私もそう思う」仮にも自分の彼氏によく変だなんて言い切れるなと思う。まあ俺も人の彼氏に変って言い切ってるけど


「一回さ、宮村に非処女って言われたことあるんだよね」
「…それ俺に言うのか」


何故唐突にそんな話になる。茶髪が机の上に無造作に広がる。携帯を開けてレミからのメールがないか確認する。新着メール零件と機械的な文字が浮かんだ。掴みそこねた空虚をもう一度掴むように手を伸ばす。非処女、成る程あの宮村くんが。彼女は唸るような声を漏らす。


「まあそう思っても仕方ないかもね」


我ながらうまくないフォローだなと思う。もう少し違う言い回しがあっだろう


「そんなこと、ないのにね」
「うん」


淡々とした会話がやわりと流れる。中学生のとき、故意にではなかったが彼女と手を重ねたことがあった。彼女の手は温かくも冷たくもなく、飽和状態だった。もうすぐ日が沈むかもしれない。窓の外から射す夕焼けの日が少しばかり眩しい。彼女は時に優しく時に理不尽で時に意味なく笑って時に意味なく怒って時に物思いに耽り時に面倒な人になる。からっぽのペットボトルが机の上から落ちる。彼女の足元まで転がったので突っ伏している彼女の名を呼ぶ。


「何」
「京ちゃんそれ取って」


機嫌の悪そうな声に眠たげに細められた目が俺に向けられた。自分で取ればいいのに、の目だ。あれは
眉間のシワが深くなる。ぽいと投げ捨てられたペットボトルはころころと机の上を無作法に転がる。頬杖をついていた右腕に当たった。


「堀さん。生徒会室にいるならメールしてくれればいいのに」
「あ、宮村」


音もなく扉が開いた。開いた扉な前で宮村くんは額に汗を滲ませて立っていた。じゃあね、仙石と冷たく放たれた声とまた明日会長とにこやかに放たれた声が入り混じる。声は出さずただ小刻みに手を振った。レミにメールをしようと携帯を開ける。新着メール一件、レミだ。2分前のものだ。校門で待っていてという文に赤いハート。ぱたりと携帯を閉じて鞄を背負う。


もうひとつの地球は心の中に



下駄箱の前にきてから生徒会室のクーラーのスイッチを切り忘れたことに気づいてまた引き返す。ピンク色の髪が瞼に覗いた

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