敗北は最初から決まっていた
「あれ、委員長ちゃん何してんの?」
『委員長らしく雑用を押し付けられてたところだよ。そういう高尾くんは?』
部活は?という意味とどうしてここに?の二重の意味が込められた質問に「今日は休みでさー、気ぃ抜いてたら携帯机に忘れちゃって!」と彼は私の前に座った。
「手伝うよ」
『え、いいよ。せっかく休みなんだから帰って休んだ方が』
秀徳のバスケ部は強いと聞くし、強いということはそれ相応の練習をしているのだろう。現に、夜まで体育館の電気が点いているのを何度も見ている。
「あーいいのいいの、どうせ俺帰ったらゲームとかしちゃうから意味ねーからさ」
『…でも』
「ていうか俺このまま帰れるほど嫌な奴じゃねーし。一人でこれすんの見るからに大変そうだから手伝わせてよ」
邪魔しねーからさ!と私を拝む高尾くん。
拝まれてまで断ればなんだか私の方が悪いみたいな気分になってきそうだ。
『じゃあ…』
「ん、これ纏めてホッチキスで止めればいいの?」
『そう、先生が会議で使うから四時に仕上げて欲しいらしくて』
「四時って…今45分だぜ、ぜってー1人じゃ間に合わなかっただろ!」
『うん。だから高尾くんが来てくれて助かったよ』
ぱちぱちとホッチキスの音が合間合間に響く。
高尾くんは邪魔しないからと言っていたが謙遜なんだなあと思った。
手際がいいし、喋りながらも手は動いている。…ぶっちゃけ私より手際がいいように見える。
私も頑張ろう、とまだ止めていなかった資料をてにとった。
「んじゃ…失礼しましたー」
『失礼します』
無事資料を作り終えた私達は職員室を後にした。
「結構ギリだったな」
『うん。ありがとう、何かお礼するよ。何がいい?』
「別にいい………あ、やっぱ欲しい!」
高尾くんでもそんなに欲しいものがあったのだろうか。
『言っておくけどそんなに高いもの買えないよ?』
「大丈夫!金かかんねーから!」
財布の中身を気にする私に高尾くんはにっと笑う。
常々思うが彼の笑顔は太陽みたいだと思った。暖かいなにかを感じる。
「なまえちゃんさ、これから暇?」
『うん、まあ…』
「じゃあ俺と出掛けようぜ!」
言われて思わず『え?』と聞き返してしまった。
「だから、俺とデートしようぜ!って。だめ?」
だめじゃないけど、だめじゃないけどこんなのがお礼だなんて高尾くんは変わっている。
ていうかこんなことされて嬉しいなんてまさかそういうことなの?と自意識過剰な頭がそう告げる。
「ほんとはさあ俺、誰彼構わず手伝うわけじゃねーよ。なまえちゃんだから手伝っただけ」
『そ、れは』
「…こーいうことされたらちょっとは好きになる?ねえ、なまえちゃん」
回らない頭で、そういえば彼は自分の机に寄っていなかったと気付いた。
◎高尾のセリフは中の人が出演したラジオから
「変態音響監督と下ネタ帝王の底辺対決」