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  つまりはきみが好きなわけだ


お兄ちゃんみたいだね、一樹くんって。
私の呟いた言葉は一樹くんに聞こえたらしく、彼はぱちりと一つ瞬きをしてこちらを見ていた。

「俺は…なまえ先輩より年下ですが」
『年の話じゃなくて、雰囲気の話』

そもそも年云々の前に姉弟ではないが。
私は自分の前に積まれた書類に目を通していく。ああ、目が痛くなってきた。
目頭をおさえる私に一樹くんは大丈夫ですか、と書類を目の入らないところへ退ける。

『なんか私より年下なのにお世話してもらっちゃってるし』
「それはなまえ先輩が抜けてるからですが」
『つまり私の方が幼いって言いたいんですかね君は』

むくれる私にそんなことないですよ、と笑顔を向けるがどうも胡散臭い。

『…一樹くんは私のこと姉だと思う、妹だと思う?』
「は、」
『どっち。選べ今すぐにこれは会長からの命令です!』

さあ選べこの野郎。
こんなことに会長という職権を使ったところでなんの効力もないけれど。
一樹くんは顎に手をあてて考え始める。
え、考えるの。そこは姉って言ってせめて。私に年上の威厳という自信をもたせて。

「どっちも嫌です」
『えっ』
「どっちも嫌です」

にこりと、さっきみたいな笑顔を見せる一樹くん。胡散臭い。

『それは私のこと嫌いという…?』
「姉でも妹でもなれない人になってほしいんですけど」
『………母?』
「なまえ先輩ってアホですよね」

完全に悪口だ。
だって姉も妹も母にはなれないじゃないか!もしくは祖母か!それとも孫娘か!!!!!
心の中で悪態をつく私の頬を一樹くんは容赦なく抓る。痛いぞこの野郎。

「身内だったら結婚できないだろ」
『は…』
「妹とか姉とかじゃなくて彼女になってほしいんですけど」

え、待ってなにこれ。告白?これもしかしなくとも告白?
それにしたってシチュエーションがおかしい。
なんで頬を抓られながら告白されてるんだろう私。もうちょっと甘い展開みたいなのがあってもよかったんじゃないの。いや、ていうかそもそも何で告白されてるの私。

『あにょ、………はなひてくだはい』

かっこつかない。なんということでしょうか。
きっと頬を抓られてなかったら顔を覆っていた。自分の恥ずかしさに耐えかねて。
一樹くんは口元を覆って震えている。笑ってるだろ、もういいよ分かるからいっそのこと思い切り笑ってくれたほうがいいよ。

「…すい、ません」
『思ってもないなら謝るな!ついでに笑いながら謝るな!』

くそう!私年上なのに!!!なめてる!!

「なまえ先輩のそういうとこ、可愛いですよ」
『………やっぱりバカにしてる』
「いやいや、そんなことは」

彼は私の頭を撫でながら可愛いですよ、とまた繰り返し言うので耐えられなくて今度こそ私は顔を覆った。

 




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