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  うっかり何かしでかしそう


『…ふくい、?』

薄らと開いた視界で、ベッドに背を預けて雑誌を読む金色の髪の毛が目に入った。
私の声が聞こえたのか、それが振り返る。そしてやはり予想した通り幼なじみである福井健介だった。

「起きたか?大丈夫かよ」
『ん、…福井何してんの…』
「俺が貸した漫画読んでる。千本桜最強だわ。でも俺が使うなら氷輪丸だな」

ああ小さいから…と納得した言葉は口に出さなかった。
今日はさすがにないだろうが、治ってからの反撃が怖すぎる。

「体だるいか?」
『ん、…薬のんだからまだマシ』
「んー…」

福井の手のひらが汗ばんだおでこを覆う。
福井とはついこないだ幼なじみから彼氏彼女になったばかりだ。
昔からこういうようなことをしてもらっていたとはいえ、立場が変わった今動揺するなという方が無茶である。

どうやらその動揺が顔に出ていたらしく福井か私の顔を見てふっ、と笑った。そんな優しそうな顔も駄目なんだってば!!

「動揺し過ぎだろ。別に風邪っぴきで弱ってる奴に手ぇ出したりしねーよ」
『………健康なときは手を出すと』
「そりゃまあ、俺だって健全な男子高校生だし色々と?」

するんですね!もうずっと風邪っぴきでいたいよ…。

『………覚悟、しときます』
「おう。どうせあんま意味ねーだろーけど1ミクロンくらいはしとけよ」

あっさり口先だけの言葉だということも見破られてしまう。
『福井、』と名前を呼べば何故だか福井は口をへの字に曲げた。…なんでだ。

「もういい加減福井じゃなくてよくねーか?」
『…ふくい、』
「だから福井じゃねーって。名前呼べんだろ」

福井は福井じゃない、というわけにはいかないらしい。
じっと見つめられて耐え切れなくなった私は小さな声で『け、んすけ』と呼んだ。
うわあああ恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!
福井のリアクションが怖くて頭から布団を被る。

『も、もうねる!』
「…おー、おやすみ。なまえ」

ちゃ、ちゃっかり自分は私のこと名前呼びやがって!!!
ぽんぽん、と布団の上から頭を撫でられて私は更に赤面した。


「あー…」

布団の下からすうすうと寝息が聞こえてきたので、俺は声に出して唸る。

あれはやばい。
俺の自制心よくやった、と誰か褒めてくれよ。

 




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