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  summer rescue



『綺麗だねー』
「だなー、早く着替えて入ろうぜ!」
『うん、じゃあまた後で!』

控え目に手を振る夢ちゃんを更衣室に入るまで見送って俺は速攻男子更衣室に入り、中に居た人達よりも早く着替えて外に出た。
隣の人にすげえ吃驚されてたけど、見ず知らずの男よりなにより夢ちゃんだ。
ぶっちゃけこれが2回目のデートで、楽しみ反面少し心配なのである。

過保護だと思いますか?そこのあなた。
では初デートのときの話をしましょう。え?興味ない?まあ聞いてけって。
俺がトイレに行って帰ってきたときだった。
「絶ッ対!ここに!居てね!」と念押ししたおかげで夢ちゃんは場所は移動してなかったものの、隣に知らない男が居て談笑していた。
「えっ」と声をあげた俺に夢ちゃんは『高尾くん』と朗らかに笑って手を振った。
そして隣の男は「なんだよ連れって男かよ…」と吐き捨てどこかに去ってしまった。

「夢ちゃん何知らない人と一緒に居んの!?」
『え?あの人も連れ待ってるから一緒に待とうよって…あれでもあの人お連れさん来てないけど大丈夫かなあ…』
「それナンパですけどね!!!」
『………えっ』

夢ちゃんはいつもふわふわしていて、そこが可愛いなあと思っていたのだがそれがあだになった結果だ。浮きすぎだこの子。
それから俺は決めたのだ。極力、夢ちゃんを一人にしないと。

『高尾くん早いね!』
「………夢ちゃん、その水着』
『さつきちゃんと選んだんだー』

水色のパーカーの下には白と水色のシンプルで、大きめのフリルで女の子らしさを出したセパレーツタイプの水着だった。
ぶっちゃけ、いや分かってはいた。夢ちゃんの趣味でそういう派手なのじゃないのぐらい分かってた。
そして俺の好みは女の子らしいもの。そう、フリルとかリボンとか水色とか白とか。
長々言ってるけどとりあえず一言で表すなら、

「ストライク…ッ!」
『え?野球?』

もうやだこの子、アホ可愛い。
顔を覆う俺の苦悩にまったく気付かない夢ちゃんが前かがみになって俺の顔を伺う。
心配そうな顔の次に見えるのは、…夢ちゃん意外とあるんですね。何とは言いませんが。

「なんでもねー!早く入ろう!お願いだから早く入ろう!」
『う、うん…』

戸惑う夢ちゃんの腕を掴んで俺は海の方へ歩き出した。


『きもちーねー』
「だな」

俺で丁度胸より下の水位のところまで浸かった。
俺でそこなのだから夢ちゃんは首の少し下まで浸かっている。
いや見えないようにね、うん何かいろいろ振り切れそうだったものだから。

「夢ちゃん泳げんの?」
『うん、多分…』

水中で繋がれた俺の手をきゅっと握る夢ちゃん。
あ、くっそ可愛い。夢ちゃんってすげえ小動物っぽいな、と前から常常思っていた。

「んじゃ泳いでみたら?」
『う、え…。………ちゃんと高尾くん見ててね』
「うん、見てるから」

おずおずと俺から手を放し、更に深い方へ入っていく夢ちゃん。
と、不意にちゃぽんと水音をたてて夢ちゃんが沈んだ。沈み方が静かだったので溺れたとは思わないがどこに行ったのか分からないのであれば少し不安になる。
とこだ、と辺りを見渡せば自分の体に柔らかい身体がまとわりついた。

『…びっくりした?』
「………」

濡れた髪を肌にはりつかせながら、イタズラ成功とでも言うかのように笑う夢ちゃん。
俺の身体には夢ちゃんの身体がぴたりとくっついていて、しかも谷間が…!!!
これぞまさに視覚の暴力。(良い意味で)

「夢ちゃんそういうの俺以外にやったらダメだからな!」
『えっそんな心臓止まりそうだったの…?』
「違うわ!」

2013.10.30 望

 




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