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  今だけは、ふたりきり


『う、あっつい…』

うだるような暑さの中、なぜ私がプール掃除をしているのかというとまあ直接的な原因は私にある。
私が「暑いから雪を降らせよう! 」と冗談で言ったら翼が「それだー!」と叫び発明品を作り上げた、のはよかった。(どうせ爆発するんだろうな、と思ってはいた)
問題はそれを生徒会室で発動させた挙句、爆発と機械に内蔵されていた水が生徒会室を水浸しにしてしまった。
大惨事、とはまさにこのこと。そして激おこぷんぷん丸を通り越してムカ着火ファイヤーな不知火先輩はこう述べた。

「夢はそんなに暑いならプール掃除でもしてろ」

笑顔の下に隠そうともしない威圧感に『ハイ…』と頷く以外に私のとれた行動はあっただろうか、いやない。
そして翼はプールでは遊ぶため生徒会室にて事務作業に縛られている、はずである。


『私は提案しただけなのにー』
「止めなかったのが問題だろ?」

一人だったはずなのに返事が返ってきた。
声を発したのはプールサイドにいつの間にか座っていた梓だった。

『え、手伝ってくれるの?』
「まあ、夢って放っておいたら滑って頭打ちそうだし」
『反論できないのが悔しい…!』

梓は持ち前の運動神経でプールサイドから飛び降り流しっぱなしにしていたホースを手に取る。

「ほら、流してあげるから早くこすっちゃいなよ」
『りょーかー、って水かけないでよちょっと!』
「涼しいだろ?」

にやりと人の悪い笑顔を浮かべて私に狙いを定めて水をかけてくる梓。
よもやこれが狙いじゃなかろうな…!
梓の攻撃を避けながら反撃のために近付く。
私も伊達に宇宙科じゃない。
と、タカをくくっていたのが多分いけなかった。
水が真正面から襲いかかった。よける事も出来ずにモロに喰らう。

『わっぷ!!』
「ははっ!」
『あ、あ梓の…あほー!』

大爆笑している梓に瀕死の一撃でダメージを与えるために飛び付いた。
そして勢いを殺せなかった梓は「う、わ?!」と声をあげて私ごと後ろに倒れる。ばしゃっ!と派手な水音があがった。

『やった!梓も濡れて気持ち悪くなってしまえええええええ!』
「うわもう…、やめてよ」
『自業自得だよー』
「………ブラ、見えてるけど?」

勝った!と思っていた私は思わぬ一言に目を丸くして、自分の胸元を見ると。

『う、わあああああ!!』
「へー、ピンクとか意外に可愛いの着るんだ?」
『言うな!そして見るな!』
「見せてきたのはそっちだろ、ていうかさ」

他の男にそーいうことしないでね、梓が私の胸元から目をそらしながらそう言う。

『え?そんなに醜い?ていうか梓ならいいの?』
「そーいうんじゃないって。あー僕ならいいよ」

理屈がイマイチ分からなかったがとりあえず頷いておくことにした。
梓が「ん、いい子」と梓が頭を撫でてくれたのでまあなんだか悪い気はしない。
そのまま梓の手に頭をすり寄せていると。

「おいこら夢!!何サボってんだ!!」
「うわ不知火先輩空気読めない…」
「うるさい木ノ瀬!大体俺はなぁ!お前が来たちょっと後に居たわ!」
「盗み聞きですか?趣味悪いですね!」
「木ノ瀬うぜえ」


2013.10.30 望

 




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