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  ソーダの虜


資料にスコアなどを書いているとふっと影が落ちた。

「夢、」
『宮地先輩…』

体育館のライトを隠すようにして私の背後に立っていたのは宮地先輩だった。
逆光だったけれどそれでも宮地先輩の顔は見えて、瞬時に顔が赤くなる。

「…お前、いい加減慣れろよな」
『む、むむむりれ、です…』

かっ、噛んだあああああた!!!
恥ずかしくて俯いた私に視線をあわせるように宮地先輩がしゃがむ。
それでも私の頭は宮地先輩の胸のあたりだ。

「彼氏の顔くらい見ろよ、轢くぞ」
『っ…』

覗き込むようにして宮地先輩は私の顔を見る。
蜂蜜色の髪が目に入り、そして少し大きめの目とあう。
つくづく思うのだが宮地先輩は顔が整いすぎだ(あと童顔。言ったら怒られるけど)。そんな顔に見つめられてしまえば赤くなるのは当然のことだと思って欲しい。
更に顔は赤くなり、これ以上赤くなりません!っていうレベルまで染まる。

「…真っ赤じゃねーか、」
『っ…も、恥ずかしい…』

見ないでください、弱々しくそう抗議すると即答で無理、と返ってきた。………なきたい。
誰か助けて!!と思っていると、大坪先輩が宮地先輩を呼んだ。

「宮地ー!監督が呼んでるぞ!…それと部活中にいちゃつくな」
「おう、休憩中にいちゃつくわ」
『そういうことじゃなくてですね!!!』

じゃあいー子にしてろよ、頭をぽんぽんと軽く叩いて宮地先輩は監督の方へ走った。
ひいいい!!!はず、恥ずかしい………!!!
その場面を見ていた高尾くんから後から言われたのだが「顔から火が出るんじゃねーかと思ったわー」と言わせる程度には真っ赤だったらしい。


宮地先輩は割と前から思っていたのだがお兄ちゃん気質だと思う。
なんていうか、扱いがうまいというか。いや、そうなると私妹になっちゃうので笑えない、………笑えない。

「おい、早く選べ」
『あ、…はい』

そう言う宮地先輩の手にはゴリゴリ君が一つ。
ゴリゴリ君いいですよね、美味しいし安いし。
私はポピコにしよう。ショーケースから取り出したそれを宮地先輩がふんだくる。

『え、』
「ちょっと待ってろ、動くな。動いたら殴る」
『ひどい!』

宮地先輩のこの物騒な言葉遣いはどうにかならないものか。
そして言われた通り固まった私を置いて宮地先輩はアイス二つをレジに出してお会計。
テープだけ貼ってもらったアイスを持って戻ってきた。

「よし、動いていいぞ」
『私は犬ですか?!って、アイス…!』
「あーうるせえ、別に良いんだよ。ポイント貯まるしな」

溶けるし早く食うぞ、そう言って外に出る宮地先輩の背中に『くそういけめん!好きです!!』と叫びたくなったがそんな恥ずかしいこと出来やしないので早足でその背中を追いかけた。

「ていうか、お前いつまで宮地先輩なの?」
『………私は五条夢ですが』
「いやお前馬鹿だろ。…ごめん馬鹿のお前に分かるように言わない俺が悪かった」
『そこまで言わなくてもよくないですか!?』

なんで私こんなにボッコボコされてるんだろう…、しょんぼりしながらポピコをくわえる。
だから、と宮地先輩が苛立ったように私に声をかける。

「名前で呼べっつってんだよ。俺の名前」
『宮地…清志先輩』
「フルネームやめろ」

きよし、先輩。
頭に染みこませるようにもう一度呟いて先輩を見ればにっと私が好きな顔で笑っていた。

「やれば出来んじゃん。おら、ごほーび」

今気分がとっても甘ったるいのは、この口に広がるアイスせいだけじゃない、決して。


2013.08.03 望

 




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