小石が隕石に変わる確率 | ナノ



  幕引きは君の手で


無我夢中で走って、体育館から離れたところで座り込んだ。
ぜえはあ、と体力のない私は大げさに息を吐く。


酸素の回らない頭で、必死に考えた。
冷静に考えれば部活の最中になんてことを叫んでしまったのだろう私は。
ああもう絶対みんなに見られてた。どうしよう、いやもう言ってしまったことはどうしようもない。
ただこれからどんな顔をして部活に戻ればいいのだろう。

そしてなにより。
福井と、どんな顔して会えばいいの。

『福井の、ばかあー…』
「馬鹿とは、なんだテメー」

………いや、え?
八つ当たり混じりに吐き捨てた独り言にまさか返事があろうものとは思わなかった。

『な、んでいるの』
「ああ?追いかけたからに決まってんだろーが」

福井ははあ、と小さくため息をついた。恐らくこれは疲れではなく呆れのため息だ。
疲れた様子もない福井は歩いてきたのだろうか?いやでも私は全速力だったし、歩いたら追いつかれる訳もない。
というか重要なのはそこではなくて。

『なんで、追いかけてんの』
「ああ?!」
『だって、福井が友達やめたいって言ったのに!関係ないじゃんか、わたしのことなんて』

ああもうこれじゃあただのワガママな子供だ。
どうすれば良いのか分からなくて、癇癪を起こしているだけで。
混乱する頭では、一番言ってはいけない言葉をぽろりと出した。

『私の事嫌いなら、ほっといてよ!!』

嫌いだなんて福井は言ってない。
そして、言葉とは裏腹に私の目からは涙が溢れていて、ああもう意味が分からない。

「…誰が、嫌いなんて言ったんだよ」

福井の声は想定していたより低い声だった。

「嫌いなわけねーだろ。嫌いならお前の面倒見たりなんてしねえ、嫌いならお前のこと追いかけたりしねえよ」
『…じゃあ、なんで友達やめたいとか』
「っ、だから友達やめて彼女になってくれって言ってんだよ!」

思わずは?とアホみたいな言葉を出してしまった。
カノジョ、かのじょ、カノジョ、…彼女?
恐る恐る手をあげ『あ、あのしつもん…』と声をだす。「…どうぞ」と福井。

『福井、私のこと…すきなの?』
「…小学生んときからな」
『………まじで』
「おう。…んで返事、は」

福井とどうなりたいのだろう。
そう考えたのは昨日のことだ。
そのときは、いまいちよく分からないと思った。でも今日は。

『好きとかは、よく分かんないけど』
「…おう」

福井が告白されるのを見てどうして私に教えてくれないんだろう、って思った。
でもそれ以上に昼休みの話が思い出されて、福井と離れるのはすごく嫌だと感じた。

『…福井の近くにいたい、です』

不安げに見上げた私を、福井はにっと笑って「今はそんだけでじゅーぶん」と抱き締めた。

 




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