小石が隕石に変わる確率 | ナノ



  崩れる天秤


『…ねー、氷室』
「なんですか?」

丁度シュート練習を終えた氷室にタオルとスポドリを渡しつつ声をかける。

『福井にさ、頼むからほっといてくれって言われて避けられてるなう』
「…えーっと、ちょっと意味が分からないですね。え?志乃さん何したんですか」
『私は何も…。あ、でも朝に福井に友達やめる気あんのかって聞かれて友達続けちゃ駄目なのって言った』

それを言うと氷室は「oh…」とアメリカンチックに唸った。

「それは…、俺からは何とも言えませんね…」
『えっ、氷室なんでか分かんの』
「まあ…、はい」

ど、とういうことだこれは…、なぜ当事者に分からなくて話しただけの他人が内容だけで分かるのだ…!!

『え、考えるからちょっと待って』
「俺の休憩時間中だけですよ」

しょうがないなあ、と笑う氷室にこれじゃどっちが年上か分からない。
だが今はそれどころじゃなくて、私が口にした内容を頭で再生する。
福井は私と友達やめたくて(泣きたい)、私が福井と友達続けたいと言ったら福井が私を避けだした。と、いうことは。

『福井、私と友達したくないってこと…?』

泣きたい、が泣くに変わった瞬間だった。
止める間もなくじわりと視界が滲んでいく。慌てた様子の氷室が目に入ったが、止められるわけもなくぽたりと床に小さな水たまりを作った。
どうしよう、今部活中なのに。どうしよう、氷室ごめん。どうしよう。

「何やってんだ、氷室」

肩が、大袈裟に跳ねた。
振り返ることは出来なかったが誰か分からないほど馬鹿じゃない。

「福井さん…」
「つか福島も、…福島?」

私がまったく反応しないのを変に思ったのか福井は私の名前を呼ぶ。
どうすればいい、まだ涙は止まらない。泣いてるとこなんて見られたくない、ましてや泣いてる原因に泣いている理由を聞かれたらどうしろっていうのだ。

「おい、福島?…って、お前」

どうしようも出来ない間に福井が前に回ってきてしまった。
滲んだ視界の中で福井が目を大きく開いたのが分かった。
そして福井は私の手首を掴んで、氷室の方へ向き直る。

「…おい氷室、なに志乃泣かせてんたよ」
『ちが、氷室じゃない…っ』
「じゃあ、誰だよ!」

なんであんたがそんなに怒ってんのよ。
福井が友達やめたいって言ってたじゃんか。

なんで、福井にここまで乱されなきゃいけないの。

『福井には、関係ない!!』

掴まれた手首を振り払って、私は体育館から逃げ出した。

 




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