変動はいやに突然で
「あの、部活前に、お話したいことがあって…!」
部室の前で福島と別れた(福島は女子更衣室で着替えるため)。
そして部室に入ろうとする俺の背中に一年の女子が俺に声をかけてきたのだ。
PGという特性上、他人の醸し出す雰囲気の察しは良い方だと思う。
つまりムードも何もかもぶち壊しに言ってしまえば「あ、告白か」と直感した。ちなみにこれが初めてではない。
「あー…おう。部活あるから悪ぃけど手短によろしく」
「っ、はい」
目立たない部室棟の裏側に連れていき、それから予想通りの言葉を告げられる。
「わたし、福井先輩が好きなんです。付き合ってくれませんか」
俺はあー…、と意識せずに言葉にしていた。
毎度毎度、返事をするには神経をすり減らして言葉を選ぶ。泣かせたくねーし。
「ごめん、気持ちは嬉しいんだけどよ」
「…そうですか。もしかして、好きな人とかいるんですか?」
女の子は眉を下げて笑った。
良い人ぶるわけじゃねーけど、いてーなーって思う。どこがとか流石にポエムになりそうだから控えておく。
「あー…まあ」
女の子はきゅっと唇を引き締めて、それから「福島先輩ですか?」と問いかけてきた。
「…やっぱ俺分かりやすいのか」
「やっぱり、そうなんですか…。まあ有名ですし、目で追っちゃいますよ。…話聞いてくれてありがとうございました」
「いやこっちこそ応えられなくてごめん。気ぃつけて帰れよ!」
「はい、それじゃあ!」
とりあえず、話は終わったのだから部活に行かなければいけない。
頭を掻きながら部室棟の横を通ればそこには影があって、しかも今一番居て欲しくない奴だった。
「…だっ、おま、え何してんだよ?!」
『うわ、福井?!』
え、マジこいつ何してんの。空気読んでくれ、頼むから。
『え、えーと…福井が部活来てなくて探しに来たんだけど…その』
「あー…いや、別に良いけどよ」
なんでこんな吃ってんだこいつ、…嘘だろまさか。
「その、…聞いてた?」
『う、ん』
あ、やべえ。目を逸らす福島に死亡フラグが建ってしまった気がする。
とにかく早くこの場を抜け出したい。いや、とにかく逃げたい。
「………んじゃ、そういうことだから」
先行くわ、ごまかすようにして福島の横をすり抜けた。
少し離れたところまで来てようやくぶはぁ!と息を吐いた。
ああ、どうやら変わるときがきたのかもしれない。しかも決意も覚悟もなにも準備してない状態で、だ!