小石が隕石に変わる確率 | ナノ



  防御不可避の小石は投げられた


『あれ、福井は?』
「知らんぞ。というか同じクラスのお前の方が知ってるじゃろ」
『それもそうか…』

福井の姿が見えなくて、岡村に聞けばそう返された。
教室出て部室までは一緒だったのにな…。
福井は何の断りもなく遅刻したりしない奴なので、何が不測の事態が発生したのだろう。

『私、ちょっと探してくる』
「おう」
『タオルとドリンクはいつものとこ置いて作ってるから私が居ないときはごめんけどよろしくね!』

11月といえど水分補給は必要だ。
岡村にそう頼んで、とりあえず部室の方へ向かった。


「わたし、福井先輩が好きなんです。付き合ってくれませんか」

………すごく、間の悪いところに居合わせてしまった。思わず部室棟の壁に隠れてしまって動けなくなる。
ていうかものすごくタイムリーな話題だな!!!昼休みにそんな話をしたばかりだよ!?
福井はあー…、と唸っていた。ああ、これは。

「ごめん、気持ちは嬉しいんだけどよ」

福井の顔が容易に想像できる。眉を下げて、頭をかいているに違いない。

「…そうですか。もしかして、好きな人とかいるんですか?」
「あー…まあ」

………えっ。

部活一直線の福井がどこに人を好きになる暇があったというのか。いや、でも可能ではあるけど。
それに福井は目はちょっと三白眼?で
怖いけど顔全体で見たら普通にかっこいいし、面倒見いいし…あれ、よくよく考えてみれば福井って結構モテるんじゃないの?!え、なんでこいつ彼女居ないの。

ていうか、ていうかだよ。
わたし、そんなのしらないよ、福井。聞いてないよ、ねえ福井。

「…やっぱり、そうなんですね。まあ有名ですし、目で追っちゃいますしね。…話聞いてくれてありがとうございました」
「いやこっちこそ応えられなくてごめん。気ぃつけて帰れよ!」
「はい、それじゃあ!」

呆然としている間に話が終わったのか、女の子がこちらに駆けてくる。
あ、やば。と思ってももう遅い。ばっちり目が合ってしまい女の子は涙で潤んだ目をこれでもかと大きく見開いていた。
そして唇をきつく噛んで、私に頭を下げて走り去ってしまった。
………え、なんで頭下げられたの私。

「…だっ、おま、え何してんだよ?!」
『うわ、福井?!』

女の子に気を取られてしまい、こちらに近づく福井にまったく気づかなかった。

『え、えーと…福井が部活来てなくて探しに来たんだけど…その』
「あー…いや、別に良いけどよ」

………気まずい!すごく気まずい!
福井は頭をがりがりと掻いてあーとかうーとか唸っている。

「その、…聞いてた?」
『う、ん』
「………んじゃ、そういうことだから」

先行くわ、福井は私の頭をぽんっと一撫でしてするりと横を通って体育館の方へ行ってしまった。


昨日福井に借りた漫画のセリフを拝借して自分の気持ちを言葉にする。
つまり、………どういうことだってばよ!

 




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