04
「高尾」
鞄を漁っていたらに真ちゃんに呼ばれたので顔をあげる。
今日は部活が点検だかなんだかで休みなため二人とも教室でゆっくり帰る準備をしていた。
………正直、今日は部活してた方が余計なこと考えなくていいんだけどなーなんて思いながら。
「紗月に伝えて欲しいことがある」
「えー…やだよ…」
俺いまそこめっちゃ繊細な話題なんだけど。結構今それタブーな話題だぜ?空気読めないのも大概にしろよ真ちゃん。
俺の悲痛な心の叫びを当然真ちゃんは聞こえていないわけで、構わずそこを荒らしていく。
「…どうせ話してないのだろう」
「…」
「…図星か」
はあ、とため息をつく真ちゃんに俺は頭が上がらない。
実際呆れられても仕方ないとは自分でも思う。
「この間俺は謝った。だが間違ったことは言っていないと思うのだよ。お前たちはもっとちゃんと喋るべきだ。お前たちは表面だけで判断しすぎなのだよ」
「………でもさあ、」
「うるさい、つべこべ言わずに行け。紗月は教室に居るはずだ」
真ちゃんはそっぽを向いて俺を教室から追い出した。
ほんと、強引なんだからさあ…。
『真ちゃん…?』
がたりと扉を触って音をたてたのに紗月ちゃんが気付いて顔をあげた。パチパチと鳴っていた音が止まる。
俺の姿を確認すると紗月ちゃんは目を大きくさせて俺を見る。
平常心、平常心。そう心の中で呟いてから俺は口を開いた。いつものような笑顔を作る。
「真ちゃんから伝言…、なんだけどなんだっけ…忘れちゃった」
そもそも伝言を聞いていない。(まあ伝言がそもそもあったのかさえ今では怪しいが)
『そ、うなんだ…。分かった、あとで聞いとくよ』
紗月ちゃんの方へ寄る。紗月ちゃんは目を大きくしたまま俺を見ている。
久しぶりにこんな近くで紗月ちゃんを見たかもしれない。
「何やってんの?」
『え、あ…先生に頼まれて、資料作ってる…』
紗月ちゃんの机の上にはホッチキスで纏められた資料が積み重なっていた。
そして反対側の机にはまだ纏められていない資料が。
「俺も手伝おっか?」
『…ううん、良いよ。ホッチキス一個しかないし』
「じゃーん」
俺が制服のポケットから出したのはホッチキスだった。
「蠍座のラッキーアイテムなんだって。真ちゃんに借りちゃった。どうせラッキーアイテムなんだから使ったらいい事ありそうっしょ」
『じゃあ、…お願いします』
任されましたー、と俺は紗月ちゃんの前の椅子を拝借した。
ラッキーアイテムの効果あった…!俺明日からおは朝見よう、そうしよう。
ただしこれが良い方に転ぶか、悪い方に転ぶかは分からないが。頼むぜ、おは朝。