05
やっと挟まれた休憩にふぅ、と一息つく。
いつもなら真ちゃんや宮地さんたちに鬼絡みするのだけれど今日の俺にそんな余裕はない。
どうやらそんな雰囲気を周りも感じとっているらしく誰も話しかけて来ない。
…まあ、今日はその方がいいや。
なんか「今日の高尾に近寄ったら削がれるぞ」と聞こえるがもうなんかどーでもいいや。俺いま人類最強らしいよ。
そんな中、この若干重い空気を切り裂く声が響く。
「お疲れさまです、遅くなってすみません」
「お、おお中川か…。お疲れ」
委員会で遅れてきたらしい中川さんだった。
大して興味も沸かない俺はちらりと見るだけでまた視線を床に落とした。
すると周りがざわざわといきなり騒ぎだした。 何かと思えば俺の前で屈んだ中川さんが居た。え、なにこの人。
「高尾くん、ちょっと良いかな」
「…手短にお願いしまっす」
いつにも増して突っ慳貪な返事をしても中川さんは怯むことなく言葉を続ける。
「緑間くんの幼馴染みの、えーっと…二つ結びの子が」
「紗月ちゃんがどうしたんですか」
「さっき泣いてたよ…?」
は?と思わず声が出た。
「なんで、っていうかどこっすか!」
「玄関のとこ。あっでも行かない方がいいよ!なんか男の子と一緒に居たし、それに…」
すごく言いにくいんだけど…、とたっぷり間を使ったあとに「その男の子が高尾くん呼ぼうかって言ったらその子いやって言ってたから」と。
「は…」
一瞬息をするのを忘れた。
「………分かりました、ありがとうございます。もう話ないですか」
早くどっか行ってくれ、というオーラを出してそう言うとさすがに感じ取ったのか中川さんは「うん」と頷き俺の前から去った。
膝の上に腕をおき、さらに頭をそのうえに置いた。
話しかけてくる奴はもう居ない。正直いま話しかけられてもまともな受け答えできる気がしない。
いやってなんだよ。本人が居たらそう問いただしていたかもしれない。
俺のこと最初から嫌いだったのだろうか。それとも、嫌いになっちゃったんだろうか。
どちらにせよ俺には辛い結果ではある。
じわりと涙が滲んだ気がしたがそんなの気のせいだと言い聞かせて俺は顔を上げた。
泣くのは後だ、今は部活中だから。
せめてまだバスケという自分が立てるような柱があってよかったと思った。
柱一本では不安定すぎるけれど。