あの子を攻略する方法 | ナノ



  06


部屋で勉強していると机の上の携帯が揺れた。
名前を確認すると高尾くんで、あれもしかしてバレた…?なんて思っていると通話ボタンを押すのに一瞬戸惑った。
それでも電話してくれているのは嬉しいわけで、私は通話ボタンを押して耳に当てた。

『もしもし、』
「あ、紗月ちゃん?ごめん、いまなんかやってた?」

一瞬の間合いで何かやっていたのかと気遣ってくれる高尾くんの声に思わずふわりとする。

『…ううん、大丈夫だよ。どうかした?』
「ちょっと今日中に渡したいモンがあるんだけど、」

今大丈夫?なんて聞かれた。うん、と答えるとじゃあちょっと家の前に出てきてくんね?と言われる。
ちょっと待ってて、と伝えて私は自分の部屋を出た。

キッチンに居たお母さんの背中に「真ちゃん家行ってくるね!」と伝えると行ってらっしゃいと手を振られた。
ここは我が幼馴染みさまの信頼度を利用させてもらつた。

がちゃりと玄関の扉を開けるとアプローチの先にオレンジ色のジャージが見えた。
音で気付いたのか高尾くんは振り返りやっほーと手をあげて笑った。

『渡したいものって?』
「んー、もう遅いかもしんねーけど」

そう言って高尾くんは秀徳のスポーツバッグから可愛らしい包装のものを取り出した。

「紗月ちゃんに似合うと思ってさ」

開けていいよ、と言われ手渡された紙袋のラッピングを丁寧にはぐとリボンのついたカチューシャが中に入っていた。

『カチューシャ…』
「ど?結構可愛くない?」

にやりと得意げに笑ったその顔にどきりとする。

『でも私、誕生日でもなんでもないよ?いいの?』
「んー、でも俺はあげたいって思っちゃったからさ、気にしないで紗月ちゃんの好きなように使ってよ」

俺がつけてもアレだしねー、なんてケラケラ笑いながら言う高尾くん。

「そういやさ、紗月ちゃんにカチューシャあげといてあれなんだけど結局今日のラッキーアイテムなんだったの?」
『え、っと、』

どっどうしよう。ここで突っ込まれるとは思いもよらなかった。いや今考えたらそりゃ突っ込まれるだろうけどなんで今気づいたの!
紙袋が私の手の中でくしゃりと小さな音をたてる。
高尾くんが下から覗き込むようにして私を見つめている。

『ひ、秘密!おやすみなさい!』
「あっ紗月ちゃん!?」

逃げ込むようにして家のなかにはいった。
あんな焦ってどもって結局誤魔化すようじゃなにかありましたと言っているようなものだ。
うあー…なんて唸っているとリビングの方からお母さんが出てきて私の顔を見て目を真ん丸くさせた。

「顔真っ赤よ?大丈夫なの?」
『だっだいじょうぶ!お風呂はいってくる!』
「…もうはいったでしょ?」

なに言ってるの、なんて言われて私は急いで自分の部屋へと階段を駆け上がった。

ふおおおお…!と顔を押さえてベッドの上で悶えていると携帯が震えた。
確認すれば高尾くんからのメールで、「おやすみ!言えなかったからメールで言っちゃう!」文章の最後に笑った顔文字がついていた。
ああもう…すきだなあ…、そんなこと思いながらそのメールを保護していた。


2013/07/11 修正・加筆

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