05
結局、真ちゃんが紗月ちゃんにメールしたらしく一限目が始まる前にカチューシャは真ちゃんの頭の上にはまっていた。…わー全然可愛くねえ。
くそ、これなら妹ちゃんにフリルめっちゃついた赤いカチューシャ借りれば良かった。
「ごめんな、紗月ちゃん」
『だだ大丈夫だよ』
「………え、マジ大丈夫?なんか目ぇ泳いでんだけど」
紗月ちゃんは一向に俺を見てくれない。
俺が顔を合わせようと右に寄ると紗月ちゃんは反対側に顔を向ける。
マジでなんかあった?と再度聞いてもななななんでもない!とのこと。いや絶対なんかあっただろ。
「あー、そういや紗月ちゃん。真ちゃんのラッキーアイテムがカチューシャなら紗月ちゃんのラッキーアイテム違うんじゃね?」
『ぶはっ!?!』
もしかしたら間違えてるんじゃね?
そういう意味で指摘したのに紗月ちゃんはどんどん顔を真っ赤にさせていく。
『えっと、あの、えっと』
「紗月ちゃん?おーい』
え、マジなんなんだろう。
呆気にとられていると紗月ちゃんは高尾くんごめんなさい!なんて真っ赤な顔で謝って自分の教室の方へ走っていった。
「…なんだったんだろ、マジで」
「さあな。知らん」
赤いカチューシャをつけた真ちゃんは机の上にもう教科書やらを広げていた。
どっ、どどどうしよう!
授業の内容なんてまったくこれっぽっちも頭に入ってこなくて。
火照る頬は一向に冷めてくれなくて先生に具合が悪いのかと心配される始末だ。
あんなピンポイントで言われるなんて、考えてなかった。
『(もし高尾くんがラッキーアイテム知ってたらどうしよう…)』
そうならほんとに恥ずかしさで死ねる。