02
今日の朝たまたまつけていたテレビで目に入ったのは真ちゃんが神と崇めているおは朝の占いで口を動かしながらそのまま見続ける。
私の星座のところにはラッキーアイテム、好きな人の身に付けているものと表示されていた。
もし真ちゃんがこのアイテムだったらものすごく困っていたことだろう、多分。
そしておは朝信者でもない私がああいった行動をしてしまったのはきっと魔が差したのだ。
「はよーっす、紗月ちゃん」
『おはよう、高尾く、ん…』
下駄箱で声をかけられ振り返ると思わず固まってしまった。
高尾くんはその表情で察したのか「ああ、コレ?」と笑いながら頭のそれを指さした。
高尾くんの頭には細身の赤いカチューシャがはまっていた。
「練習中前髪落ちてくんのが邪魔でさ、たまにコレしてんのよ。妹ちゃんに貰ったんだけど」
変じゃない?と笑いながら問いかける高尾くんに似合ってるよ、と伝える。
「良かったー、女みたいって思われたらどうしようかと」
そして頭にちらりと浮かんだのは例のおは朝の占い。
ラッキーアイテムは好きな人の身に付けているもの。
『た、かおくん。それ今日1日だけ貸して、欲しいなー…』
「へ?いいけど…なんで?」
『えっと…今日のラッキーアイテムがカチューシャだから』
嘘じゃない。80%ぐらいは嘘だけど。
私がびくびくしながらそう言うと高尾くんは「ついに紗月ちゃんも信者かー」なんて笑いながら頭のカチューシャを外して、私はそれを受けとろうとして手を出す。
すると高尾くんは私に近付いて頭にそれをはめてくれた。香った香りに思わずどきりとした。
うまくいったのか高尾くんがよしっ、と言って私から離れていく。
『ありがとう…』
「いーえ、紗月ちゃんにもいいことあると良いな!」
そうしてにっこり笑った高尾くんに思わず言いそうになった。
高尾くんの笑顔が見れたからもう良いこと起きてる気がする。
じゃあね、俺がそう言うと紗月ちゃんはふわりと笑って俺に手を振る。それだけで充分満足なのに頭の上にはまっているそれは俺ので。
なんだか自分のものを身に付けて貰っているのはなんかこう…なんとも言えない優越感に浸れる。
やっべ、絶対いま顔にやけてるわ。
つか、なんかアレだな。紗月ちゃんと居るとどんどん変態みたいになりそう。
それはそれで贅沢な悩みだよなあ、なんて思いながら教室の方へ歩き出した。