01
「う、あっちぃ…」
茹だるような暑さのなかで行われている始業式。
校長の長い話を真剣に聞いている生徒などほぼ居ないだろう。
かくいう俺もその一人でシャツの襟元をぱたぱたと動かして中に風を送り込んでいた。
「うるさいのだよ、高尾」
そして前にいる真ちゃんは真面目に聞いている貴重な一人で、背筋をピンと伸ばした190cm超の体はまあ目立つ。
「だってよー、このクソ暑い体育館に30分も閉じ込められるとか死んじゃうくね?むしろ今にも死にそうっつーか?」
「そうか。もう黙って死ね」
「ひっでえ!」
そうして何やら俺らが喋っている間に校長の話は終わったようで壇上から下りていく校長に拍手が送られていた。
始業式が終わり、体育館から出ていく人混みのなかで紗月ちゃんを見つけた。
相変わらず後ろ姿だけでも可愛いです!
「紗月ちゃーん」
『あ、高尾くん。おはよう!』
俺ににこりと笑顔をみせてくれる紗月ちゃん。ほんと可愛い。
どうしよう俺可愛いしか言えてないんだけど。仕方ない、だって可愛いんだもん!
『暑かったねー』
「だよなー。どうせやるなら大掃除の前にやって欲しいわ」
『…今、外掃除だからそれもやだなあ…』
「じゃあいつやんの」
『………夜とか』
いい提案した、と言わんばかりのキリッとした顔に思わず吹き出した俺は悪くない。
「夜とか学校終わってんだけど!まあ俺は紗月ちゃんに会いたいからいいけどねー」
すると紗月ちゃんのキリッとした顔は途端にへにゃりと歪み更には頬を真っ赤にした。
『…そういうこと、簡単にいっちゃだめだよ』
「………紗月ちゃんもそういう反応しちゃだめだかんね」
周りからすれば何でてめーら付き合ってねーんだ、という話である。
「なあ緑間」
「…俺に振らないでください」
花やらハートやらを振りまいている二人に正直後ろから蹴りを入れたい思いでいっぱいである。
高科は手加減して脳天チョップだが。
「お前の幼馴染みと相棒だろーが 。責任とれよ」
「あんまりイライラするなよ、宮地。余計暑くなんぞ」
木村が苦笑いで俺を嗜める。が、俺のイライラは収まらない。
「俺はあいつの相棒なんかではありませんし、紗月の責任をとれというのは意味が分かりません」
「うるせえ黙れ」
…横で小さく「理不尽なのだよ…」と緑間が呟いたのを俺は聞き逃さなかった。
よし、緑間外周追加。と心のメモに留めておいた。