あの子を攻略する方法 | ナノ



  05


『高尾くんのコミュ力の高さは一体どこで培われたの…』


お昼ご飯はショッピングモールに入っていたスイーツバイキングだった。

私は甘いもの大好きだから全然大丈夫だったのだけれど高尾くんは甘いもの漬けで大丈夫なのだろうか。確か高尾くんの好物は辛いもののはずだった。
私がそう問いかけると高尾くんは案内された席に座って「最近はパスタとか付いてるし大丈夫。それに甘党の紗月ちゃんは辛いの好きじゃないっしょ」と笑って答えた。

なんか、…ものすごく彼女扱いされてる気分になる。
うわあああもう私最低だ、高尾くんは女の子に優しいだけ!そう言い聞かせて頬をぺちりと叩いた。


あのあとも高尾くんと女の子向けのお店を色々と回ったが、どこに行っても高尾くんは話しかけられてもちゃんと返すし「これとか可愛くね?」っと差し出してきたのだった。(しかも持ってきたものがほぼ私の好みドンピシャだ)

「えっなにが?」

高尾くんはよく分からなかったらしくフォークで器用にパスタを巻いていた。(アラビアータで一口貰ったけど辛かった)

『普通女の子向けの店に入ってあそこまで店員さんと堂々と話す人って中々居ないと思う…』
「あーそれね」

そうぼやいて高尾くんは巻き付けたパスタを口に入れた。

「俺、妹居るからさよく行くんだよね」
『えっ妹!?』
「あれ、そんなに意外?」
『いやあの…驚いた割には納得しちゃいました』

確かにお兄ちゃんっぽい。
そう私が伝えると高尾くんはぶははっ!と吹いた。

「ま、そんなわけでさ結局俺って女の子のもの見立てる目も良いってわけよ!」
『高尾くんセンス良いよね』
「ご用のときはいつでも呼んでくれて良いのよ?」

うちの妹ちゃんなんかまるで俺を執事のようにつれ回すんだぜー、とそこから家族談義が始まった。


『ごめんね、高尾くん』
「だからー、ありがとうのが俺は嬉しいんだけど?」

紗月ちゃんはお昼代を俺が二人まとめて払ったことを気にしているらしい。
気にしなくて良いのに、紗月ちゃんの眉を下げた顔を見て俺はずっとそう思っていた。

「俺がしたくてしたことなんだからさ、気にしなくて良いよ」
『でも…』
「じゃあ今度、購買のパン奢って」

俺が提案した案に紗月ちゃんはまだ不満げだった。俺これ以上譲歩しねーよと伝えるとようやくありがとう、と言ってきた。(若干不満の残る顔だったけどね!そんな顔でも可愛いと思う俺はもう完全に病気だな。治んなくていいけど)

「次どっか行きたいとこある?」
『…ていうか私ばっかりで申し訳ない気が』
「え?ああ、俺?」

そう問うと紗月ちゃんはこくりと首を縦に振って。
そうは言われてもなー、なんて思いながら周りの店を眺める。
…別に今欲しいモンとかねーしなあ。………いや訂正。物はないけど欲しい者はいる。本人に言えるわけないですヨネー。

「あ、じゃあゲーセン行きたい」
『ゲーセン?』
「俺めっちゃ得意だからさ」

まあ見てみなって、にやりと多分人の悪そうな笑顔を紗月ちゃんに見せた。


『えっあ、凄いとれた…!』
「ふふん!見たかこのホークアイの隠れざる能力を!」

そう偉そうに言って下の受け取り口から紗月ちゃんご希望の人形をとって渡す。

『高尾くん凄い!二回でとれちゃった…』
「どうよどうよ!」

ぎゅっと抱き枕サイズの人形を胸に抱いて目をキラキラさせて凄いと口から連発する紗月ちゃん。
まあ褒められて悪い気はしない。ていうか喜ぶ紗月ちゃんマジ可愛い。

『私いっつもアームの力弱くって…』
「あーあれは持ち上げるもんじゃねえよ。転がすもんだと俺は思ってる」

次なにが良い?俺がそう聞くと紗月ちゃんはまた目をキラキラさせてあれっ!と新たな機体を指差した。


『もっふもふ…!』

店員さん泣かせぐらいの人形やらクッションやらを手にした紗月ちゃんはご満悦のようで。
ちなみに一番のお気に入りは最初にとった人形らしい。
抱き締めては柔らかい感触を味わっていた。人形場所かわれ。

「満足?」
『うん!ありがとう高尾くん!』

えへへー、と幸せそうに笑う紗月ちゃんに俺まで幸せな気分になる。

「そんじゃそろそろ帰ろっか?」
『そっか、もうそんな時間かあ…』

その声音と呟いた顔は残念そうで、ああ紗月ちゃんも残念だと思ってくれてるのかななんて考えた。
まあそれを口に出せるほど図々しくはなれないけれど。



駅まで一緒に行こ、と言う高尾くんに私は有り難くお願いしてついてきてもらった。
二人とも電車だけど路線が別なのだ。
今では繋がれるたびにあたふたしていたのも落ち着いてたのが手から伝わる熱をじんわりと感じながら足を進める。

そうして歩いたら当然駅に着かないわけなくて、五分も歩けば着いてしまった。
ぱっと離された手が名残惜しい。

「楽しかった?」
『うんすっごく!』

不意にそう聞かれたけれど私は自信をもって答えた。

「そっか、良かった」
『…高尾くんは?』
「楽しくないように見えた?」
『………高尾くん顔つくるのうまいんだもん』
「紗月ちゃんはすぐ見破っちゃうからもう作ってませーん」

高尾くんは、からかうようにそう言って笑い「超楽しかったよ」と言ってくれた。
ああ、…もうそれだけで十分です。なんて私は欲がないのでしょうか。

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