あの子を攻略する方法 | ナノ



  03


高尾くん曰く、今日ショッピングモールにしたのは色々と理由があったらしい。

「ほんとはさ、遊園地とか水族館とかでガーッ!と遊ぶのとかが良いかなーって思ったんだけど…、紗月ちゃんがそういうとこ楽しめるかよく分かんなかったからさー」
『私好きだよ、そういうとこ』

というか、高尾くんと一緒に行ったらどこでも楽しめそうな気が…、いやなんでもないです。はい。

「あ、そう?まあとりあえず今日はそういうことを聞いて次に役立てようかなって!だから今日の俺的目標は買い物と喋ること!」

だから紗月ちゃんのこといっぱい教えてな、そう言いながら高尾くんは笑った。
次に、って次も遊んでくれるのかな…。

「どっから回る?ていうか紗月ちゃんここよく来んの?」
『んー…たまに、かな。季節の変わり目に新商品とかセール狙って』
「あーそのへん狙い目だよな、分かる分かる」

やっぱり安く買いたいもんね、なんて言い合いながら私と高尾くんは一軒目の店に足を進めた。


『かっ、わいい…!!!』
「おー」

二つ目に入ったお店で私好みのカーディガンを見つけた。

「こういうの好きなの?」
『うん!ポンチョとかもこもこしたやつ好きだなあ』

今日は残念ながら暑くて着ていないけど。…あ、色違いも可愛い。
黒と茶色を一つずつ持って高尾くんを見上げる。

『…高尾くんどっちが好き?』
「………俺は黒のが好きだけど、どっちも着てみたら?」
『…ううん、黒でいい』

どうせなら好きな人の趣味にあわせたい、じゃないですか。………いや茶色のカーディガンもってるし、黒も欲しかったし…ね。うん。あ、なんか余計に恥ずかしくなってきた!どうしよう!

真っ赤になった顔を高尾くんに見せないために私は急ぎ目に黒地のカーディガンを胸に抱いて試着室に入った。
どうせ着ている服の上から着るだけなのでさっと終わる。
出る前に鏡で顔を確認。…よし、大丈夫。
仕切っていたカーテンをシャッと開けて恐らくそこに居るであろう高尾くんの方へ顔を向ける、と。
カーテンを開けた体勢のまま私はかちりと固まった。

『…!?』

何故か店員さんが高尾くんの横に居た。しかも楽しげに2人で喋っている。
えっ、えっなんで!?
普通女の子向けのお店で男の人につくのだろうか。
一瞬にしてパニックに陥った私に高尾くんは気付いてどう?と聞いた。
どうもこうもそれどころじゃないですよ高尾くん!

店員さんはターゲットを私に替えたらしくこちらに寄ってくる。

「そのカーディガン今人気ですよー!私服にも制服にも使えますし」

その質問に応えたのは高尾くんだ。

「へー、そうなんッスか。袖がちょっと長めなのがいいな、店員さん萌えポイントわかってる!」
「ありがとうございます!萌え袖は可愛く見せるポイントですよ!」

店員さんは高尾くんの言葉ですっかり上機嫌だ。

「どうする紗月ちゃん。それ買う?」
『か、買い、ます…!』
「ふはっ、じゃ脱いで出といで」

高尾くんがちょいちょいと手招きするので私はやっとカーテンを掴んでいた手を離して試着室から出た。

高尾くんが選んでくれた黒色の方を手にとってさっきの店員さんが立つレジに向かうとにこにこ笑いながら店員さんが商品を受け取って会計を始める。

「センス良い彼氏さんですね!」

さっき褒められたことが嬉しかったのだろう、上機嫌な店員さんが服をバッグに積めながらにこにこと言った。
しかし問題はそこではない。
私は慌てて違いますよ、と否定しようとする前に隣に立っていた高尾くんがそうでもないっスよ、と笑った。

その言葉はつまり肯定しているということで、店員さんから見て私と高尾くんはめでたくカップル認定されたのだ。…えっ待ってなんでそんなことに。高尾くんが肯定したからだけど!

戸惑う私に店員さんは服を詰めたバッグを渡してきた。
受け取ろうとした私より先に高尾くんがバッグの持ち手をとって反対の手はすんなり私の手を握る。
またお越しください、なんて言葉を背中で聞きながら高尾くんを呼んだ。

『か、彼氏って…!』
「あーいうのは否定するより流した方が楽じゃね?勘ぐられるのもやだし。それとも嫌だった?」
『そんなこと、っ』

ないに決まってる。
あまつさえ自分がそういう関係になりたいと思っているのだからそんなの嫌なわけない。

「じゃ気にしない気にしない!それより次どこ行こっか」

繋がれた手が熱かった。
それはきっと私の体温が高いからなのだろうけど。

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