04
『真ちゃーん…って、高尾くんどうしたの…?』
「…紗月か」
恒例の真ちゃんにお弁当を届けに来たのだけれど、真ちゃんの後ろの席の高尾くんが机に突っ伏していて驚いた。
昼休み始まったばかりだし寝るよりは普通はお弁当食べたりするはずで、この様は寝ているというより疲れてる感じにみえた。
私の声が聞こえたのか高尾くんが顔をあげる。
「紗月ちゃん…?」
『うん。…どうかしたの?疲れてるみたいだけど…』
「あー…いや、うん何でもねーよ!紗月ちゃんに関係ねーことだから気にしないでー」
『そっ、か。あ、真ちゃんお弁当』
はい、と真っ黒の弁当袋を渡す。
真ちゃんはテーピングの巻かれた指でそれを受け取り、高尾くんに視線を向けた。
「おい。食べないと部活で倒れるのだよ」
「…ああ、うん」
緩慢な動きで高尾くんは机の横にかけてあった袋をとった。
『それじゃ、私教室戻るね』そう声をかけて教室を出る。
…関係ない、もんなあ。まずクラスメイトでもないし、部活関連のことでも私は選手でもマネージャーでもない。
ただの友達だけど、…それでも相談して欲しいって思うのはやっぱりわがままなことなんだろう。
『…最近、欲張りになってるなあ…』
これはよくない、非常に。私はぺちりと軽く頬を叩いた。
「………なにそんな見てんのしーんちゃん!穴開いちゃうでしょー!」
高尾が俺の視線に気付いてそう茶化すが覇気がない。
コミュニケーション能力の長けているあの高尾が今回のことは相当参っているらしい。相手も先輩だから強く言えないということか。
「…なんか反応しろよ真ちゃーん。ちょっと俺泣いちゃうよ?」
「…」
「無言?!」
「中川」
「あ、大坪。どうしたの?」
これなんだが、大坪が差し出したのは紗月が綴って纏めたルーズリーフ。
「…なにこれ?」
「お前の前に臨時でマネージャーに入ってた奴が考えてた夏合宿の献立。良かったら役立ててくださいって言って預かった」
「ああ…、そういえば夏合宿のご飯ってマネージャーの仕事だったっけ?…ふーん」
中川はそれをぺらりと捲って軽くあげた。
「わざわざありがと」
「ああ。そいつにもそう言っておく。それじゃ」
大坪の用件はどうやらそれだけだったようですぐに自分の教室の方へ戻っていった。
中川はその背中を見届けてからルーズリーフをすぐそばに置いてあったゴミ箱の上に落とした。
そして中川は何食わぬ顔で自分の友達の輪に混ざる。
「ゆかり、大坪なんだったの?」
「部活の連絡でプリント持ってきたみたい。まあすぐ覚えちゃったから捨てちゃったけど」
「さすが、頭いい人は違いますネー」
関係ないでしょ、と中川は友人に返しながら拳を強く握って近くに居た友人にも聞こえないぐらい小さく呟く。
「………要らないわよ、あんなの」
その目は、以前紗月を睨んだときと同じ感情を孕んでいた。