あの子を攻略する方法 | ナノ



  01


「…真ちゃん、紗月ちゃんは俺のことどう思っているのだよ」

七月というのにこのうだるような暑さはなんだ。
そして土日だっていうのにこの課題の多さはなんなのだよ。
真ちゃんの口調を真似てそう聞いてみるとミニテーブルを挟んだところに座っていた真ちゃんは顔を歪めた。

「人の口調で遊ぶな。そして課題が多いのは秀徳が進学校だからなのだよ」
「…ごめんなひゃい」

真ちゃんが頬を引っ張るので呂律が回らない。

「だってさー紗月ちゃん、俺のこと名字で呼ぶんだぜ。俺は名前で呼んでのにさー」
「名前で呼べと言えば良いのだよ」
「言ったっつの」

したらさ、慣れるまで待ってって言われたんだよ。
ただでさえ可愛いのに更に可愛くお願いされたら断れるわけないじゃん俺がさ!
しかもこの前の泥酔した紗月ちゃんに散々抱きつかれたりだの好きだと言われたりだの俺は振り回されっぱなしだ。

「あー…」
「それより課題をさっさとやるのだよ高尾」

とっくに終わったらしい真ちゃんは本を読んでいた。おーおー流石エース様だぜ。え?関係ない?そんなの気にすんなよ。
はいはいやりますよー、そう言いながらペンを持てばなにやら階段を忙しくあがる音がした。

「今日は誰も居ないんじゃねーの?」
「…」

真ちゃんがため息を一つ吐いて本をぱたりと閉じた、らドアが思いっきりバーン!と開いた。

『真ちゃん助けて!宿題わかんな、い…』
「紗月ちゃん…?」

俺の姿を確認して目を丸くする紗月ちゃん。そしてたっぷり数秒溜めた後に悲鳴をあげた。

『な、なんで居るって言ってくれないの真ちゃんのバカー!!!』
「勝手にあがりこんで来たのはお前だろう!あと叫ぶな近所迷惑なのだよ!」

ドアの影に隠れた紗月ちゃんは真っ赤な顔でこちらを見ている。あ、やべ可愛い。

『あの、その…あっ、こんにちわ!』
「ぶはっ!こ、こんにちわ…!」

まさか挨拶してくるのかよ、思わず吹いちゃったじゃないか。

『し、真ちゃんやっぱ私帰る…』
「えっなんで駄目だよ紗月ちゃん」

せっかく会えたっていうのにさ、帰すわけねーじゃん。

『だ、だって服とか頭とか適当だし…』
「だーいじょうぶ!俺気にしないし!」
『私が気にするのー!』

とゆうかちらりと見てしまったが半袖のパーカーにショーパンだった。涼しさを追求した結果か。

「というか扉を閉めるのだよ。冷気が逃げる」
『ああっ!ごめんなさい…』

そう真ちゃんが言うとやっと紗月ちゃんが真ちゃんの部屋に入ってきた。
うわ生足やべ。白いし細すぎだろちゃんと食ってんのかよ紗月ちゃん。このまま直視してると良からぬことを考えてしまいそうだったので目を逸らした。


「それで何が分からないのだよ」
『あの…ここなんだけど、』

ど、どどうしよう高尾くんこっち見てくれないし…!あっでも高尾くん私服可愛い…。パーカーとか似合うなあ…。
チラチラと高尾くんの方を窺ってもいっこうに目が合わない。やだもう泣きたい。
やっぱり汚い!?見苦しい!?邪魔!?
そう考えていると頭に衝撃がはしる。

『いたっ!痛い!』
「人が教えてやってるのだからちゃんと集中するのだよ」

どうやら仏頂面の真ちゃんが丸めた教科書で私の頭を叩いたらしい。女の子になんたる仕打ち。私が頭を押さえて真ちゃんに異議を申し立てているといきなら高尾くんが勢いよく立った。

「ちょーっと俺暑いしアイス買ってくるわ!二人ともなんか要るもんある?」

そう言いながら高尾くんは自分のであろう鞄から財布を取り出す。

「…アイスを買ってこい、下僕」
「ひっでえ!紗月ちゃんは?」
『わ、私もアイスで』
「オッケー!じゃあちょっと行ってくる!」

じゃ勉強頑張ってね、なんで言いながら高尾くんは真ちゃんの部屋から出ていく。
私は高尾くんが出ていったその扉を見つめていると真ちゃんがはあとため息をついた。な、なんでため息!

『…』
「冷たいおしるこが飲みたいのだよ」
『…行ってこい、と?』
「大体集中出来ていないのだから勉強したって意味がないのだよ。さっさと行って来い」

今から行けば間に合うのだよ、そう言って真ちゃんは閉じていた本を開いて読み出した。

『…行ってきます!』
「扉は静かに閉めるのだよ!」

うーん気合いが入りすぎたようです。


二人も居なくなりやっと静かになった部屋で俺はため息をまたついた。
最近の俺はどうにもため息が多い。ため息をつくと幸せが逃げると言うがその大半は間違いなくいつまで経ってもくっつかない奴らのせいで。
だが俺の運勢はおは朝のラッキーアイテムで補正されているので大したことではない。

問題なのは人の部屋でいちゃいちゃすることだ。
奴らを見ていると体感温度があがって俺はひっそりとエアコンの温度を下げた。
地球温暖化にまた一歩近づくがそれもこれも奴らのせいだ。
宮地さんを呼べばきっと「さっさと宿題しろ轢くぞ」と言ってくれるのだろうが、俺も言いたい気持ちで満々なのだよ。

そんなことを思いながら手元の本をまた一頁捲った。


04/08 加筆・修正

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