03
「え、宮地先輩なんでこんなとこ」
確か宮地先輩は家真逆だったはず。
俺がそういうと宮地先輩は自転車のハンドルに肘をついてあー…と唸った。
「まあ気分転換」
「へー…」
「なんだその顔。居ちゃ悪いか」
轢くぞ、と宮地先輩はマジで自転車を微妙に動かしたので俺は勘弁してください!と叫んだ。
「そんなこと一言もいってないじゃないっスか!」
「顔が言ってんだよ、顔が」
「言いがかりっスよその発言!」
「あーもうごちゃごちゃうるせー、ガムテ持ってくんぞ」
仕打ち地味にひどくね!?と思ったものの口にすれば99.999(以下略)%の確率でしばかれるので黙っておいた。
「じゃ、俺もう帰るから」
「お疲れーっす」
『先輩さよならですー』
宮地先輩が遠ざかっていく背中を見つめながら俺は「まじこえー…」と呟いた。
俺のその呟きが聞こえていたようで紗月ちゃんはくすくす笑った。
あ、可愛い。なんて思っていたらポケットの中で携帯が揺れた。
「あ、真ちゃん…」
「『あ』」
俺たちは忘れていた真ちゃんの冷たいおしるこを買ったのを。
メールに目を通すと真ちゃんが怒っていることが伺えた。
「やべっ真ちゃん怒ってる!走れそう?」
『うん!』
もう既に走り出している紗月ちゃんを追い越して俺たちは繋いでいた手をそのままに走った。
その後、ぬるくなったおしるこを真ちゃんに献上すると俺は拳骨、紗月ちゃんはチョップを脳天に食らって「高校生にもなってはじめてのおつかいか?」と怒られた。いやはじめてのおつかいはもうとっくに済ませてるんです、俺。
しかも真ちゃんの口からはじめてのおつかいという言葉に吹いてしまい余計怒られた。
まあ紗月ちゃんが笑っていたので良しとする。