the day
『…お菓子がいっぱいだね』
「俺絶対こんなに食べたら太るわ」
紗月ちゃんの部屋の片隅には置かれた俺の鞄と、お菓子ばかり入った紙袋が一つ。
どうやら昨日のうちに俺は食べ物しか受け取らないということが出回ったらしく、今日の朝来たときにはもう靴箱やら机の中やらに詰め込まれていた。
『むっくんが居たら1日で食べれちゃいそう』
くすくす笑う紗月ちゃん、困ったことに例え友達だと分かっていても湧いてくるのが嫉妬心というやつで。
「俺といる時に他のやつの名前出すの駄目だって言ったろ?」
『あ…ごめんなさい』
「あー紗月ちゃんからプレゼント貰えないと俺怒っちゃうかもな」
子供か、と突っ込まれそうだがいまこの場にツッコミは居ないので知ったこっちゃない。
ていうか普通自分の好きな子から誕生日プレゼントが欲しいじゃないですか!
『…子供みたい』
「俺まだ17だから子供ですー」
『……腕、だして』
そう言って紗月ちゃんは机の上に置かれたものを手にとり、俺の腕にはめた。
『何がいいか悩んでて…伊藤くんは腕時計とかいいんじゃないって言ってくれたんだけどいつもしてくれるものが良いなって思って』
「…バスケのときも?」
『高尾くんの好きなものだから、ちゃんと支えたいなって思ったからこれにしたの』
俺の腕には濃い黒のリストバンドがはまっていた。
『…パスのときとか少し手首に負担がかかるってテツくんから聞いたことあったから、これが少しでも和らげてくれればいいかなと思ったの。……だめだった?』
何も言わない俺に不安になったのか紗月ちゃんは眉を下げて俺を見上げていた。
「違うから!紗月ちゃんは俺の事考えてくれてていい子だなーって思ってたの」
『…和成くんは、すぐそういうことサラッというよね』
「褒め言葉だけど?」
ひらりとかわす俺に紗月ちゃんは諦めたのか話題を変えにかかった。
再び立ち上がり机の上に置いていた細長い箱を手にとって開けた。
『…あとね、これも』
「…ペアネックレス?」
『これは私が欲しくて…。バスケのときは外してくれてもいいし、和成くんが嫌じゃなかったら付けてほしいなって』
ほんとさっきから控えめだなあ、紗月ちゃんは。
いやだなんて、そんなことあるわけないのに。
箱から鎖が少し太い方の男物を手にとった。
「つけて」
『…うん』
俺がそう言って手渡すと紗月ちゃんは俺の前で膝立ちになり、チェーンの端を持った手を首の後ろに回す。
チャリ、と音がしてそれから首にひんやりとした感触。
俺は片割れのネックレスを手に取り前に居る紗月ちゃんの首にネックレスをつけた。
そうしてから、腕をそのまま自分の方へ引き寄せた。
紗月ちゃんがバランスを崩して俺の方へ倒れこむ、『わっ』なんて小さな悲鳴をあげたがそれすらも愛しく感じる。
「紗月。好き、大好き」
『和成くん、』
「すげえ好きだよ、紗月」
ぎゅっと抱きしめれば、紗月も抱きしめ返して俺の胸に顔を埋めた。
『誕生日おめでとう、和成』
囁かれた言葉は、今までの誰に言われたのよりも嬉しかった。
Happy Birthday!! 11/21
for Kazunari Takao!!2013.11.21