あの子を攻略する方法 | ナノ



  04


「紗月ちゃんいい子だなー」
「お前が名前で呼ぶな、この野郎」

きらきらとした目でデザートを選ぶ紗月ちゃんを見守っていると伊藤が口を開いた。

「ほんとはさ…、高尾にも紗月ちゃんにも絶対嫌われると思ってたんだけどな」
「…俺も紗月ちゃんが許さなかったら許してねーよ」

たとえ中学からの仲といえど、許せるものと許せないものがある。親しき仲に礼儀ありというやつだ。
伊藤もそのへんは分かっているようで、「だろーな」と自嘲気味に笑った。
でもすぐに眉間に皺を寄せる。

「…けど、俺にだって譲れなかった。さっきの話だって俺に話してくれたわけじゃなくてほぼ俺の想像だよ。甘えてくれないから頼られたら応えてやりたいって思ったんだよ」

あんなクソみたいな兄貴が好きでもさ、と伊藤は窓ガラスを見ながらそう呟いた。

「まあお前ら見てたら…正々堂々ぶつかってみよっかな、とは思ったんだけど」
「砕けてしまえ」

間髪いれずにそう放った俺に伊藤がくくっと笑う。俺が言えたものではないがこいつも大概笑いのツボがおかしい。

「…高尾さん怖いわ、一言の威力やばいわ」
「………今日の俺は伊藤を許さないと思うけど、そんな俺を紗月ちゃんがきっと許してくれないので今日ぐらい俺に怯えろバーカ!」

伊藤はくつくつ楽しげに笑って「高尾さんとか呼んだ方がいい?」と明らかなからかい口調でそう言った。

「高尾様と呼べ!高尾様と」
「そんな高尾様に良いこと教えてやるよ」

にやり、と笑った伊藤に期待半分嫌な予感半分くらいの思いが沸く。

「俺が紗月ちゃんと話すときにさ、話題にしてたの何だと思う?」
「は?」
「どれでも楽しそうに聞いてたんだけど一番嬉しそうなのはこれだったんだよな」

紗月ちゃんの話題が出て俺が聞かないわけねーだろ?
好奇心で伊藤の口元に耳を寄せた俺はその後大層後悔することとなった。


『………高尾くんどうしたの?』

デザートの乗ったトレーを持った紗月ちゃんが戻ってきた。
しかし高尾は机に突っ伏したままである。俺はおかしくて腹を押さえる。

「いや、…ぶふっ…なんでも、ないよ」
『伊藤くんもどうしたの?!』
「いや…ぶはっ…!ちょっと、腹、痛い…ひぃっ」

なにこいつ面白、高尾はまったく動かない。いや肩は震えてる。
やべえ、やべえわほんと。俺の言葉そんなに威力あったか。…あったな、高尾にとったら。


一番嬉しそうに聞いてたのは高尾の中学んときの話だったよ。

そう告げたら高尾は一瞬で耳まで真っ赤にして、顔が勢い良く机に逃げた。
勢いが良すぎてがんっ!!!といい音をたてたのは言うまでもない。
そこで当然俺の腹筋は崩壊するよね。しないわけないだろ。

未だに状況の分からない紗月ちゃんはあたふたしていたが、もう少しそっとしておいてやってよ、ぶふっ…!

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