03
伊藤が目を瞑ると紗月ちゃんは小さな両手でぺちんと伊藤の顔を挟んだ。
伊藤は殴られることを覚悟していたのか開いた目は丸かった。
『はい終わり』
「…高科さん」
『いっぱい泣いちゃったけどそのお陰で高尾くんとこうして居られるし、高尾くんにその分幸せにしてもらうから大丈夫だよ!』
だから気にしないで、と笑う紗月ちゃん。やだもうほんと可愛い。
「…高科さん、高尾やめて俺にしない?」
頬におかれた紗月ちゃんの手に自分の手を重ねた伊藤が無駄にキリッとした顔でいう。
俺は慌てて紗月ちゃんの手を引っペがした。
「しねえよバカ!!ちなみに俺は殴る気満々だからな!」
「えー高尾は俺が居なかったら告白も出来なかったんだから俺にちょっとは感謝しろよな」
「お前厚かましいにも程があるだろ!ちったあ反省しろ!」
「じゃあ今日は俺の奢りということで、どうよお二人さん?」
まだ罵ろうという気持ちはあったのだが浴びせようとした言葉が突っかかる。
その言葉はひどく甘い誘惑である。学生の自由につかえる金額は少ないのだ。
「………よっしゃ紗月ちゃんいっぱい食うぞー!」
『わーい!』
「一応言っとくが限度ってもんがあるから…って、高尾お前そんな食うのかよ?!おいちょっと待て!!」