あの子を攻略する方法 | ナノ



  09


「俺が紗月ちゃんのこと嫌いって言った?俺が紗月ちゃんのことただの友達だなんて言った?
なんで俺の言葉、聞いくんないの、」

責めるつもりはないのに、そんな言い方になってしまう。

『っ…だって、!じゃあどうして伊藤くん紹介したり、応援したりなんてするの!?友達だからそうしたんだって、紹介できるただの友達だって思ったって仕方ないでしょ…!』

それは、と思わず言葉に詰まった。

「っ…ごめん!あー…っそれはごめん、でもちょっと待って、…多分俺らちゃんと話さなかったから、今からでも遅くないならちゃんと話そう。な?」

ヒートアップしそうな口論に自分で頭に水をかけてストップさせる。本題はここじゃない。
紗月ちゃんはひくっとしゃくりをあげながらも首を縦に振った。
…あーもー、泣かせちゃった。真ちゃんに殴られることが確定したような気がするが、今はそんなことに構ってられない。
紗月ちゃんの手を握って顔をみる。云うなら今しか、ないだろ。
心臓がうるさい、手も震えてる。あーかっこ悪いなー、なんて少し思ったけど、でもこれが俺なんだ。繕ったって意味がない。
はー…、と息を吐く。そして顔をあげ、口を開いた。

「…大事だよ、大事だから壊したくないって思って臆病になって俺も避けてたんだよ。だけどやっぱ伊藤にも誰にも渡したくねーわ。

好きだよ、誰より。紗月ちゃんが好きだ」

紗月ちゃんの気持ち聞かせて、俺がそう言うと紗月ちゃんはうぇ、と嗚咽をあげて大粒の涙を零した。

『っ…高尾くん、ずるい、なんなのもう…!』

…いやもう、ほんと可愛い。どうしよう、可愛い。
ほぼ答えを言っているようなものだが、そんでも散々焦らされた身としてはこれくらいの意地悪は許してほしい。

無言で待つ。それでも逃す気はありません、と意思を伝えるかのように俺は紗月ちゃんの腕を引いて、近くに寄せてその目をずっと見続ける。
紗月ちゃんは『…ばか』と呟き、涙を拭った。
目元を赤くしたまま俺を見つめ返して、そして口を開いた。

『伊藤くんね、優しくて面白かった。だけど馬鹿みたいに嬉しくなるのも、泣いちゃうくらい悲しくなるのも、…誰よりも好きになるのも高尾くんだけなの』

私も高尾くんが好きです。

へにゃりと笑った彼女が可愛くて堪らなくて、紗月ちゃんに聞くことも忘れてた抱き締めた。
紗月ちゃんは一瞬驚いて『わっ?!』と声をあげていたが俺の背中に腕を回した。
いつかに彼女を抱き締めたことを思い出す。あのときは、する前に許可を貰った。だけど今はそんなの要らなくて。
じんわりと、制服越しに感じる体温とか感触とかが俺紗月ちゃんの傍に居れるんだ、と殊更に俺の胸をくすぐる。

「幸せだわー…」思わず出てきてしまった呟きに紗月ちゃんは『…どのくらい?』と尋ねてきた。

「えー?そうだなー…俺が今、世界中で一番幸せだって思っちゃうくらいには幸せ。紗月ちゃんは?」
『………私も、世界で一番幸せだよ?』
「ふはっ、二人居たらダメじゃん」

そんなことで笑ってしまって、ああでも俺は紗月ちゃんが笑ってるだけで幸せだし二人いても問題ねーか。

そのまま暫く空いていた隙間を埋めるかのようにそのまま抱き締めあっていた。

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