あの子を攻略する方法 | ナノ



  08


電話を切ったあと、画面にメールの新着表示があるのに気づいた。アドレスは真ちゃんのもので俺はすぐそのメールを開く。
すると「二階北、一番端、空き教室。」と単語のみで綴られたもので、理解した瞬間逆方向に全速力で走る。
あああもうあそこで曲がんなきゃよかった…!
後悔したって遅い。とにかく早く、一秒でも早く、紗月ちゃんのとこに行かなければきっといろいろ駄目にする。
それだけは確実に分かることだった。


そうして飛び込んだ二階北、一番端の空き教室では何故か紗月ちゃんがぼろぼろと泣きながら真ちゃんに頭を鷲掴みにされていた。

なんだこれ。シリアスじゃなかったのか。もしかしてシリアルなのか。
…そんなはずはないだろう。さすがに。

『なんっ?!えっ、高尾くん…!?』

混乱する紗月ちゃんを他所に、真ちゃんははあ、とため息をついた。

「まったく…遅いのだよ」
「悪ぃ」

結構これでも頑張って走ったのよ、と俺は汗を拭う。
紗月ちゃんは話がみえないようで目を白黒させていた。
うん、ちゃんと今からわからせてやるからちょっと待ってて。

「俺は帰るから、お前がちゃんと送るのだよ」
「わーってるって!心配症な幼馴染みだなあ」

俺がそう茶化すと緑間が「うるさいのだよ」と眼鏡をくいっとあげていた。照れ隠しとみた。
真ちゃんが出ていくのを見送って、扉が閉まったのを確認してから紗月ちゃんに向き直る。

「さて、………なーんでそんな離れてんの」

紗月ちゃんは先ほどの位置より二歩ほど離れており、口元に手を寄せていた。

『な、なんでっていうかなんで!ばいばいって言ったのに…』
「俺はばいばいなんて返してねーよ、」

そう言いながら一歩寄ると紗月ちゃんは一歩下がる。
うんまあ良いよ、別にそれしてても。
どうせ、逃げられやしねーよ。

「あーもう、目元赤くなってんじゃん…、なんで切ったの」
『っ、!』

紗月ちゃんは後ろの壁にぶつかって追い詰められた。もう逃げられないように俺は右手を掴む。

「待ってって言ったのに、」
『だ、って…!じゃあ高尾くんにごめんって、友達にしか見れないって言われた方が良かったの…?』
「っ、勝手に俺の気持ちを決めんな!」

叫んだ声量か、それとも叫ばれた言葉か、あるいはどちらもか。何にせよ紗月ちゃんがびくりと竦んだ。

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