あの子を攻略する方法 | ナノ



  06


向かった先はお手洗いでもなんでもなかった。
秀徳高校は歴史ある学校なため空き教室が多い。走りながら目に付いた空き教室に適当に入って、床が埃っぽいとかそんなの気にする余裕もなくそこに座り込んだ。

『っ、ふ…!』

手で、口元を押さえて嗚咽をもらす。
口を押さえていなければ、きっと泣き喚くことを抑えられないと思った。

好きな人に別の人とを応援されることがどれだけ辛いか初めて知った。
無理だ、我慢できるわけがなかった。
お手洗いに行くと言った以上、教室には戻らなきゃいけないから涙は止めなきゃいけないのにどんどん溢れて止まらない。

ひくり、としゃくりをあげるとポケットに入れていた携帯が震える。
取り出せば、高尾くんからの電話で。
私はどうしよう、と焦っていた。
出れば絶対に泣いてるのがバレる。教室に帰ってもきっとバレる。

「出ればいいのだよ」

後ろから私の携帯をとったのは、真ちゃんだった。

『なんで、…』
「お前の教室の外に居たのだよ。心配して来てみれば、案の定だったのだよ。…出ないのか?高尾だろう?」

真ちゃんは震え続ける携帯を持って再度私に問う。

『…出れないよ、泣いてるのばれちゃう』
「…高尾がそれだけ鳴らすということはおそらく泣いていることは、ばれているのだよ」

相棒の言うことはアテになる、というか嫌に信憑性がある。
そうなのかもしれない、いや、でも。

『…出たくないの。いろいろ言っちゃいそうで、』
「言えばいい」
『え…』
「言ってなにが悪い?高尾に何かを伝えるのがそんなに駄目なことなのか」

そう言って真ちゃんは勝手に電話を通話状態にして、私に渡した。
真ちゃんを見れば、大丈夫だとでも言うように強く頷いた。
私は意を決して、携帯を耳に宛てた。


「出ねえ…!」

携帯を耳に当てながら校舎を走る。
これ先生に見つかったら完全にヤバイやつ。しかし運は俺に味方しているのか廊下は先生おろか生徒も通らない。
プルルッと鳴るコール音は一体何回目か。

「紗月ちゃん…!」

縋るようにそう名前を呼ぶとブッ、と突然コール音が途切れた。

「紗月ちゃん?!」

出た、そう思って咄嗟に叫ぶ。
少し間があってからもしもし、と小さな声が聞こえた。

「いまどこ!」
『…高尾くん、私って友達?』

紗月ちゃんは俺の質問に答えずに逆に質問を返す。

「は…、え?なに、ちょ」
『私のこと、友達って思ってる?』
「そ、りゃ…大事な友達だけど、…いやていうかどこに居んのって!」
『そ、っか…。私ね、友達じゃやだよ』

頼むから場所教えて、そう思っていたのに色々吹っ飛んでしまった。

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