Ver.日向
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日向順平くんに逆プロポーズしてみた!
床と彼の大好きな戦国武将フィギュアがぶつかった音が響いた。
『ちょ、順平落とした!』
「え、あ…幸村あああああああ!!!!!」
叫ぶくらいならなぜ落とす。
いや、確かに彼が真田幸村のフィギュアを嬉しそうに眺めていたときに言ったのが悪いのかもしれないけれどでもそんなに驚かなくったっていいのに。
落とした幸村を注意深く観察し、傷がないことを確認したのか慎重に棚にそれを戻して私のところへダッシュでやって来た。
「…きっと俺の聞き間違いだと思うんだが、お前今何て言った?」
『私と結婚してくださいって言った』
眼鏡の奥の瞳が揺らいだ。
「おまっ…そんなはっきり言うなよ…」
『………なんで、嫌なの?』
「嫌っじゃ、ねーけど…」
もしかして順平は私と結婚したくないんじゃないか、という思いが頭を掠める。
あー…、と唸りながら頭を掻く順平を黙って見つめる。
「………指輪とか言葉とかちゃんと用意して俺からすっから、待っててくれよ」
『…私、結構頑張って言ったのに』
「…俺いっつもヘタレだからこういう時ぐらいかっこつけさせろよ、だぁほ」
別にお前の気持ちが嬉しくなかったわけじゃねえから安心しろ、そう言って淳平はソファに座っていた私をぎゅっと抱き締めた。
ああもうこれだけで安心できてしまうのだから、私って結構単純だ。